手術前からのリハビリであるプレハビリテーションの最大のメリットは、術後の合併症が減らせることです。
とくに食道がんは、体への負担が大きな手術が必要となり、また、合併症も多いことより、プレハビリテーションの重要性が高まります。
今回、日本の施設から、食道がん患者に対する入院プレハビリテーションの効果についての結果が報告されました。
たった1週間でも、入院中にしっかりとプレハビリテーションを行えば、合併症が確実に減るというデータです。
食道切除を予定した食道がん患者に対する入院プレハビリテーションの有効性
日本からの研究です。
この研究は、食道切除術を受けた48人を対象としたレトロスペクティブな解析です。
一方のグループ(25人)では、外来で呼吸訓練、自己トレーニング(ウォーキングとスクワット)の指導のあと、手術の3日前に入院して、手術を受けました(コントロール群)。
もう一方のグループ(23人)では、外来で呼吸訓練、自己トレーニング(ウォーキングとスクワット)の指導のあと、手術の7日前に入院してもらい、1週間の病院でのプレハビリテーション(有酸素運動+筋力トレーニング)をしてから手術を受けました(強化プレハビリテーション群)。
ちなみに、強化プレハビリテーション群では、午前と午後の2回、有酸素運動(エアロバイク 20~30分)と下半身の筋トレ(スクワット 10~20回を20セット、1日2回)を行いました。
結果
その結果、
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術前および術後の6メートル歩行距離は、強化プレハビリテーション群で、コントロール群に比べて有意に長くなっていました。
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呼吸に関連した合併症の発生率は、強化プレハビリテーション群(4.3%)で、コントロール群(36%)に比べて有意に低くなっていました(P = 0.007)。
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無気肺という合併症(肺組織が虚脱し肺の中の空気が減少した状態)の発生率は、強化プレハビリテーション群(0%)で、コントロール群(24%)に比べて有意に低くなっていました(P = 0.012)。
以上の結果より、食道がん患者に対する強化プレハビリテーションのプログラムは、呼吸に関連した合併症(無気肺など)のリスクを減らすことができると結論づけています。
もちろん、RCT(ランダム化比較試験)など大規模な臨床試験による確証は必要ですが、プレハビリテーションが食道癌患者にとって有用であることを示すデータです。
まとめ
食道がん患者を対象とした研究において、術前1週間の強化プレハビリテーションによって、呼吸に関連した合併症を有意に減少する可能性があるということです。
短い期間でも、プレハビリテーションはやるべきということを裏付けるデータです。
具体的なプレハビリテーションの方法については、こちらをご覧ください。
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