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がんの手術までにしておくこと:持病(慢性疾患)の治療と情報共有

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最近では、持病(慢性の病気)を抱えたがん患者さんが増えました。

特に高齢の患者さんでは、高血圧や糖尿病など、なにかしら持病(とくに生活習慣病)がある人が大部分です。

また、長期間にわたってたばこを吸っていた人では、呼吸の病気(COPDなど)を患っていることもあります。

毎日、たくさんのお薬を飲んでいる人もいらっしゃると思います。

今回は、がんの手術までにしておくべきこととして、持病に関する大切な確認事項について説明します

持病が悪化した状態だとがんの手術がうまくいかない

がん患者さんの中には、治療中の(あるいは、過去に診断された)慢性の病気を持っている人がいると思います。

もちろん持病があっても、しっかりと治療を受け続ければよいのですが、なかには、もらっている薬を飲み忘れたり、自己判断で中止してしまったり、あるいは病院に行かなくなったりする人もいます。

持病がうまくコントロールできてない状態や悪化した状態で手術を受けると、麻酔や手術の合併症が増加し、さらには生存率まで低下することがあります

例えば、食道切除術をうけたがん患者1500人以上を対象としたヨーロッパからの研究では、術前に慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、重症の気管支喘息などの呼吸器の持病がある人(全体の約17%)では、術後に縫合不全(つないだところが漏れる)、肺炎、その他の呼吸器合併症がおこるリスクが50~80%も高くなるという結果でした。

一方で、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患を持ちながら手術(肺の手術以外)を受けた患者を対象とした研究によると、術前に禁煙に加えてステロイド吸入療法を導入していた人では呼吸器関連の合併症のリスクが90%以上も低くなっていました。

この結果より、喘息やCOPDがある人では、術前から積極的に治療することによって合併症のリスクを減らすことができる可能性があるとしています。

大腸がん患者1300人以上の解析によると、術前に糖尿病(高血糖)、高脂血症、あるいは高血圧があると予後が悪くなることが明らかとなっています。

とくに、術前に血糖値が高い患者は生存期間がとても短くなるという結果でした。

別の研究では、切除手術を受けた膵臓がん患者のうち、術前に糖尿病のコントロールが悪い人(つまり血糖値が非常に高い人)では、死亡率がおよそ2.5倍も高いというデータもあります。

このように、術前に呼吸器疾患や糖尿病などの持病がしっかりと治療できていない場合、術後の合併症リスクが高くなったり、生存率が低下したりすることがわかっています。

したがって、糖尿病をはじめ、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、高血圧症、心臓病(狭心症や不整脈など)などの持病がある方は、手術の前にしっかりと治療を受け、できるだけ病気がコントロールされた状態で手術にのぞむ必要があります

 

あなたの持病についてかかりつけ医に相談しましょう

まずは、がんの手術が決まったら、持病の治療を受けている病院(かかりつけ医)に相談しましょう。

また手術を受ける病院側も、あなたの持病の情報を共有する必要があります。したがって、必ずこれまでの経過(病歴)について、かかりつけ医から診療情報提供書(紹介状)をもらい、手術を受ける病院に持参しましょう(あるいは郵送してもらいましょう)。

手術前には、必ず主治医(手術を担当する外科医)は患者さんの持病や既往歴(過去の病気)について調べるのですが、患者さんが申告していないものに関しては、抜け落ちてしまします

大事な情報が伝わらない可能性もあるのです。

「軽い病気だから言わなくてもいいだろう」と勝手に解釈せずに、病気やアレルギーなどの情報に関しては、すべて主治医に伝えるようにしましょう

いつも飲んでいる薬(常用薬)を主治医に伝えましょう

今現在飲んでいる薬(常用薬およびサプリメント)についても、手術を受ける病院の主治医(あるいは薬剤師など他の医療者)に伝える必要があります。

なかでも要注意なのは、抗血小板薬や抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を飲んでいる患者さんです。

これらの薬は、手術の前に一定期間中止(または他の薬に変更)する必要があります。

薬の種類によっては飲み続けたまま手術を受けた場合、出血が止まらなくなる可能性もあり、大変危険です。

もしあなたが「血液サラサラの薬」を飲んでいる場合、必ず主治医に伝えてください。自分がこれらの薬を飲んでいることかどうかわからない場合には、病院に「おくすり手帳」を持参しましょう。

持病と常用薬を自分自身で把握し、手術の前にきちんとコントロールすることが手術の成功につながります。

まとめ

持病を抱えているがん患者さんが、手術日までにしておくこととして、

  • 持病の治療、情報共有(診療情報提供書)
  • 飲んでいる薬についての情報(あるいは「おくすり手帳」)を主治医に伝える

ことを、忘れないようにしましょう。

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医+がん研究者。 産業医科大学第1外科講師。専門は「すい臓がん」。エビデンスと経験に基づいた「患者さんファーストのがん治療」が目標です。ブログ、ツイッター、YouTubeなどでがん患者さんに役立つ情報発信しています!

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