マグネシウムはからだに必須のミネラルで、不足すると、疲労、筋力低下、骨粗しょう症、高血圧、不整脈、心臓病、糖尿病など様々な症状や病気を引きおこすといわれています。今回、食事やサプリメントからのマグネシウム摂取不足が、膵臓がん(膵癌)の発症リスクを高めるという研究結果を紹介します。
はじめに
マグネシウムはカルシウムと同様、体に必要なミネラルの一種です。
意外と知られていませんが、マグネシウムは骨や歯を形成する以外に、エネルギーの生成や肝臓の解毒機能、ホルモンや酵素の生成、活用、脂肪の燃焼に欠かせません。
マグネシウムが不足すると、疲労、筋力低下、骨粗しょう症、高血圧、不整脈、心臓病など様々な症状や病気を引きおこすと報告されています。
さらに、マグネシウムの不足は糖尿病の発症につながるという研究報告もあります。
これは、日本における疫学調査で、食事からのマグネシウム摂取量が少ない人は、糖尿病のリスクが高くなることが確認されたそうです。
糖尿病は膵臓がんの危険因子であることより、マグネシウムの不足は膵臓がん発症とも関係があるのではないかと考えられています。
今回は、マグネシウムの摂取量と膵臓がんのリスクについての研究結果を紹介します。
マグネシウム不足で膵癌リスクが増加
2015年に British Journal of Cancer という雑誌に発表された論文です。
アメリカの50~76歳までの66,806人の成人を対象として、食生活と膵臓がんとの関係を調査した大規模な研究です。
詳しい食事内容の調査を行い、約7年間の追跡期間中に151人が膵臓がんを発症しました。
食品およびサプリメントからのマグネシウムの1日の推奨摂取量は、男性で420 mg、女性で320 mgと設定したところ、
マグネシウム摂取量が、この推奨量をみたしていたグループと比較すると、マグネシウム摂取量が、推奨量の75~99%のグループでは、膵臓がんの発症リスクが42%上昇していました。
また、マグネシウム摂取量が推奨量の75%以下のグループでは膵臓がんの発症リスクが76%も上昇していました。
この結果より、マグネシウム不足は膵臓がん発症率を高めることが分りました。
さらに、この研究では、マグネシウム摂取量と膵臓がんのリスクについての過去の疫学研究についても集計して解析していますが、同様に、摂取量が増えると、膵臓がんのリスクが低下するという結果でした。
全体では、マグネシウムを最も多く摂取するグループは、最も少ないグループに比べて、およそ20%膵臓がんのリスクが低くなっていました。
マグネシウムどのくらいとればいい?
では、どの程度マグネシウムを摂取すればよいのでしょうか?
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、性別や年齢によって異なりますが、男性では1日320~370 mg、女性では1日260~290 mgの摂取が推奨されています。さきほどの海外での推奨量よりは少ないですね。
ただ、実際には、日本人の栄養量の摂取状況をみると、この基準を満たすほどマグネシウムを十分には摂取できてないようです。
どのような食品にマグネシウムが含まれているのでしょうか?
マグネシウムが豊富に含まれている食品は、海藻類、豆類、ナッツ、野菜類、魚介類、未精製の穀物です。
とくに、マグネシウムをたくさん含む食品を紹介します。
まずは、海藻類です。あおさ(青のり)、ひじき、わかめ。これ以外にも、こんぶや焼き海苔にもマグネシウムが多くふくまれます。
次に豆類です。きなこ、油揚げ、納豆ですね。
最後にナッツです。マグネシウムが多いナッツには、ひまわりの種、アーモンド、カッシューナッツなどがあります。
この他にも、くるみや落花生など、一般的に、ナッツには、マグネシウムが多く含まれています。
これらのマグネシウムをふくむ食品をできるだけ毎日摂るようにこころがけましょう。
食事からあまりマグネシウムが摂れない人は、サプリメントでも手軽に摂取できます。
以上、マグネシウムの不足で膵がんのリスク上昇というお話でした。
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