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肝臓がん(肝癌)のリスクを低下させる食品3選:全粒穀物、トマト、コーヒー

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肝臓癌(肝がん)の原因は、大部分は肝炎ウイルスでしたが、最近、脂肪肝による肝炎(NASH:ナッシュ)から癌が発生する例が増えています。一方で、特定の食品によって肝がんの発症リスクが低下することが報告されています。肝がんのリスクを低下させる食品3選を紹介します。

はじめに

肝臓がん(肝癌)は、日本では罹患率は減ってはいますが、いまだに多くの患者さんが亡くなっている予後の悪いがんの一つです。

現在、肝がんによる死亡者数では、男女合わせると5位で、5年生存率は30~40%となっています。

肝がんの原因は、大部分は肝炎ウイルスでしたが、最近、肝炎ウイルスに感染していない人から肝がんが発生する例が増えています。

報告によると、1991年には肝炎ウイルス感染と関係のない肝がんの割合は10%であったのが、2015年には30%をこえるまで増えているとのことです。

このウイルス肝炎と関係のない肝がんの原因のうち、NASH(ナッシュ)と呼ばれる病気が注目されています。

脂肪肝(肝臓に脂肪が多くたまった状態)には、アルコール性と非アルコール性がありますが、NASH(ナッシュ)とは、非アルコール性の脂肪肝が原因でおこる肝炎のことです。

NASHは、肥満症、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病がある人に多いことがわかっています。

NASHを放置していると、やがて肝硬変、肝がんへと進行することがありますので、注意が必要です。

さて、この予後が悪い肝がんですが、ある食品によってリスクを低下させることができるという研究結果があります。

今回は、肝がんのリスクを低下させる食品3つを紹介します。

肝がんのリスクを低下させる食品3選

1.全粒穀物(ホールグレイン)

「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白していない穀物のことで、胚芽、胚乳、外皮などが含まれています。

どんな食品があるかというと、玄米、大麦、全粒粉の小麦を使った食品(全粒粉パンなど)、オートミールなどです。

日本では、玄米や発芽玄米が一般的ですが、最近では、オートミールも人気が高まっていますね。

この全粒穀物が肝がんのリスクを低下させるという研究報告が、最近、2報、有名なジャーナルに発表されました。

一本目は、2019年にJAMA Oncol という雑誌に報告された論文で、アメリカ人125,455人を対象とした非常に大規模な前向き研究です。

このうち、24年にわたる観察期間中に、141人が肝癌を発症していましたが、全粒穀物を最も多く摂取していたグループでは、最も少なく摂取していたグループに比べ、肝癌のリスクが37%減少していました。

もう一つは、2021年にNature Commun という雑誌に報告された論文です。

こちらも、アメリカ人485, 717人を対象とした前向き研究ですが、先ほどの研究と同様に、全粒穀物を最も多く摂取していたグループでは、最も少なく摂取していたグループに比べ、肝癌のリスクが22%減少していました。

というわけで、全粒穀物には、肝癌を予防する効果が期待できると結論づけています。

2.トマト

野菜は、肝がんのリスクを下げる食べ物ですが、なかでも、トマトが肝がんのリスクを大幅に低下させる可能性があるという研究データがあります。

2020年に Cancer Epidemiol Biomarkers Prev という雑誌に報告された論文です。

63,257人の中国人を対象としたSingapore Chinese Health Studyという前向き集団研究です。

食事内容について、くわしいアンケート調査を行って、その後、平均で17.6年間、追跡調査を行いました。

その結果、もっともトマトを少なく摂取するグループに比べて、もっとも多くトマトを摂取するグループでは、肝細胞がんのリスクが37%も低くなっていました。

とくに、肝炎ウイルスの感染がない人において、トマトの予防効果が強くみられたということで、脂肪肝のある人にはとくにオススメの食品です。

3.コーヒー

コーヒーには、さまざまながんの発症リスクや死亡リスクを低下させる効果があることが報告されています。なかでも、コーヒーによる肝癌の予防効果が有名です。

およそ9万人の日本人を対象として、コーヒー摂取と肝がんの発生率との関係について調べた大規模な研究があります。

この研究によると、コーヒーをほとんど飲まない人と比べ、ほとんど毎日飲む人では肝がんの発症リスクが約半分に減少し、さらに(ちょっと多いと思いますが)コーヒーを1日5杯以上飲む人では、肝がんのリスクは4分の1にまで低下していました。

その後の日本人を対象とした研究をまとめた解析でも、コーヒーの摂取が一杯増える毎に、肝癌のリスクが約30%減るという結果でした。

一方で、緑茶に関しては、このような効果は確認されませんでした。

まとめ

以上、肝癌のリスクを低下させる食品3つとして、全粒穀物、トマト、コーヒーでした

肝癌は予後の悪いがんではありますが、こういった食品でもリスクを下げることが可能です。

 

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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