唐揚げ、とんかつ、フライドチキン、フライドポテトなど、揚げものは、人気がある食べものです。一方で、揚げものは体に悪いと言われています。今回は、揚げもの、および、AGE(終末糖化産物)とがんとの関係を調査しました。
はじめに
唐揚げ、とんかつ、フライドポテトなど、揚げものは、ポピュラーな食べものですね。
とくに、ファストフードのお店やコンビニで、こういった揚げものを買う人も多いと思います。
昔から「揚げものは体に良くない」という話を聞いた人もいるでしょう。
たしかに、揚げものを食べ過ぎると、太るということは経験的にも理解できますが、がんのリスクはどうなんでしょうか?
今回は、揚げものとがん、そして、AGEとがんとの関係についての研究を紹介したいと思います。
揚げものとがんとの関係
まずは、揚げものとがんとの関係についての大規模な研究を紹介します。
2019年に、ブリティッシュメディカルジャーナルという雑誌に報告された論文です。
この研究では、アメリカの50歳~79歳までの女性10万人以上を対象として、揚げものを食べる頻度と、がんの死亡リスクとの関係を調査しました。
揚げものには、フライドチキン、フライドフィッシュ、フレンチフライ、フライドポテト、それから、ポテトチップスやトルティアチップスなどのスナック菓子も含まれています。
ちなみにアメリカでは、成人のなんと25~36%が、ほぼ毎日、ファストフードレストランでフライドポテトなどの揚げものを注文しているそうです。
その結果、揚げものを食べる回数とがんによる死亡リスクとは関係ありませんでした。
一方で、揚げもの(とくに、フライドチキンと魚のフライ)を食べる回数が多い人では、全ての死因による死亡率と心血管病による死亡率が10%以上高くなっていました。
つまり、がんではなく、他の病気で亡くなる可能性が高くなるということです。
終末糖化産物(AGE)とがんとの関係
次に、AGEの話です。一般的に揚げものには、健康に悪いとされる「AGE」が多く含まれているといわれています。
AGEとは終末糖化産物のことで、加熱することによって、糖とタンパク質(あるいは脂肪)が一緒になった物質のことです。つまり、糖がタンパク質にこびりついて、タンパク質が劣化したものです。
AGEは、糖とタンパク質が含まれる食品を高温で調理するとできるため、揚げものに多く含まれています。
ですから、揚げものをたくさん食べると、血液中のAGEが増えていきます。
実際に、AGEが多くふくまれている食べものには、揚げたベーコン、チキンナゲットやフライドチキンなど、揚げものが多いのが特徴です。
AGEは、べたべたと引っ付きやすく、小さな血管内につまったり、炎症をおこすことがわかっていますので、心血管病やがんのリスクを高める可能性が指摘されています。
AGEと乳がんについての研究を紹介します。2020年にCancerという雑誌に報告された論文です。
アメリカの18万人以上の閉経後の女性を対象として、食事内容の調査からAGEの摂取量を推定して、乳がんのリスクとの関係を解析しました。
その結果、最も多くAGEを摂取していたグループでは、最も少なかったグループと比べて、乳がんの発症リスクが9%高くなっており、とくに、進行がんのリスクは37%も高くなっていたとのことです。
また、最近、日本人を対象とした、AGE とがんとの関係を調べた研究が報告されました。
今年の6月に、Cancer Scienceという雑誌に報告された論文です。
3万人以上の日本人について食事内容の調査を行って、その後10年以上の長期にわたってがんの発症を調べた前向き研究です。
AGEを多く摂取することと全体のがんの発症リスクとの間には関係はみられませんでしたが、男性で、肝臓がんのリスクが2倍以上に上昇していました。
以上の結果から、「揚げもの」だけに限定した研究では、がんのリスクは上昇しないということですが、すべての死因による死亡リスクは高くなると言うことです。
また、AGEを多くとることで、女性では乳がん、男性では肝臓がんのリスクが高くなるという研究結果でした。
ですので、揚げものや、高温で調理する食べものは、美味しいのですが、ほどほどにするのがいいと思います。
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