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がんの原因となる危険な毒を出す大腸菌?コリバクチンを産生するpks+大腸菌の危険性と食事との関係

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大腸がんの原因となる危険な大腸菌とは?pksという遺伝子配列をもつ一部の大腸菌は、細胞の遺伝子変異を引き起こす毒素「コリバクチン」を産生します。今回、コリバクチンを産生するpks+大腸菌の危険性と食事との関係について解説します。

はじめに

日本だけでなく、世界的な傾向として、大腸がんが増えています。

この、大腸がんの増加については、高齢化もひとつの原因ですが、それだけでは説明がつかないわけで、若い年齢の人にも、大腸がんが増えていることが統計でわかっています。

発がんの原因として、遺伝子異常(おもに、遺伝子の配列が変化する、遺伝子変異)がひとつの重要なメカニズムであることは、ご存じだと思います。

では、なぜ、遺伝子変異が起こるのか、ということですが、これは、親から子へ遺伝子変異が遺伝することもありますし、偶然のDNAの複製エラーが多いといわれていますが、それだけではありません。

じつは、遺伝子変異を誘発させる特殊な物質(遺伝毒性物質と呼んでいますが)があり、その一つが、最近、注目を集めている、「コリバクチン」という物質です

「コリバクチン」は、一部の大腸菌が腸内で生成する物質で、いくつかの研究によると、大腸がんの患者さんの腸のなかでコリバクチンを産生する大腸菌が増えており、発がんを促進している因子と考えられています。

今回は、このコリバクチンを産生する特殊な大腸菌の危険性と、食事との関係もふくめて解説します。

1.大腸菌による特殊な遺伝子変異の誘発

腸内細菌の遺伝子解析によって、一部の悪玉菌が、がんの原因になっていることが明らかとなってきました。

このうち、大腸がんの原因となる細菌として、ある毒素を産生する特殊な大腸菌が注目されています。

人の腸には、通常、大腸菌がいるわけですが、このうち、pksという特殊な遺伝子の配列をもつ大腸菌が発見されました。

このpksという部分は、「コリバクチン」という物質を産生する酵素の設計図であることがわかりました。

このコリバクチンは、細胞の遺伝子に対して毒性をもっていて、DNAを切断してしまうために、例えば、DNAを構成する4つの塩基のうち、チミン(T)が他のものに変わったり、欠失するといった特異的な遺伝子変異のパターンを作り出すことがわかりました。

実際に、2020年にNatureに報告された研究によると、人の腸の正常な幹細胞と、この大腸菌を一緒に培養すると、腸の細胞に特異的な遺伝子変異がおこることが確認されました。

2.大腸がんとコリバクチン産生大腸菌との関係

つぎに、実際の患者さんにおける研究の結果です。

腸内細菌を調べたいくつかの研究によると、このコリバクチンを産生する大腸菌は、健康な人の20%に確認されたとのことです。

ところが、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の患者さんの40%、そして、大腸がん患者のおよそ60%にみられたとのことです。

したがって、コリバクチンが人の腸の細胞の遺伝子変異を直接引き起こすという結果と合わせて考えると、コリバクチン産生大腸菌が、一部の大腸がんの原因になっていることがうかがえます。

3.食事とコリバクチン産生大腸菌との関係

では、このコリバクチン産生大腸菌は、どういった人に多くいるのでしょうか?

じつは、食事と関係あるということが報告されています。

今年の6月に Gastroenterology という雑誌に報告された研究を紹介します。

アメリカ人13万人以上を対象として、食事の内容を調べて、その後の大腸がんの発症を調査した研究になります。

大腸がんになった人のうち、西洋型の食事スコア(赤肉、加工肉、高脂肪乳製品、フライドポテト、卵、甘いデザート、精白した穀物、バター、マーガリンなどを多くとる食事スタイル)が高い人では、便の中にコリバクチン産生大腸菌がたくさん存在していたとのことです。

つまり、西洋型の食事スタイルが、このコリバクチン大腸菌と関係している可能性が高いということです。やはり、食事と関係していることは間違いないようです。

最後に、日本人を対象とした研究を紹介します。

2020年に Scientific Reports という雑誌に報告された論文です。

この研究では、健康な日本人223人を対象として、便のなかの細菌とふだんの食事との関係をしらべています。

その結果、このコリバクチン産生の大腸菌が27%の人にいたそうです

さらに、コリバクチン産生大腸菌が存在する割合は、男性では2倍以上だったとのことですが、一方で、食事との関係については、緑茶を摂取してい人では、この大腸菌の割合が40%、ミネラルの一種マンガンを多く摂取する人では50%以上も減っていました

ちなみに、マンガンは、植物性の食品が主な供給源で、全粒穀類、豆類、ナッツ、茶葉に多く含まれています。

以上の結果から、大腸がんの原因となる危険な大腸菌が増えるのを予防するためには、緑茶やマンガンを含む食品をとることがいいかもしれないということです

 

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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