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がん手術前の患者さんに注意してほしいこと:深部静脈血栓症

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がんの手術前にはいくつか注意すべきことがあります。

なかでも、おもに足の静脈に血栓(血のかたまり)ができる「深部静脈血栓症」には要注意です。

この病気は「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもありますが、ときに命をおびやかす合併症をおこすことがあります。

じつは、がんの患者さんは、深部静脈血栓症ができやすいことがわかっています。

今回は、がんがん手術前の患者さんに注意してほしいこととして、深部静脈血栓症をとりあげます。

深部静脈血栓症(足の静脈の血のかたまり)の可能性がある人は要注意

がんの手術のさいに、とくに問題となるのが深部静脈血栓症です。

深部静脈血栓症は、足(ふくらはぎや太もも)などの深いところにある静脈に血栓(血のかたまり)ができる病気です。深部静脈血栓症がある人は、できた血栓がはがれ、肺の動脈に到達して血管をふさいでしまうことがあり、これを肺塞栓症といいます。ひとたび肺塞栓症を発症すると、命にかかわることもあります。

深部静脈血栓症の原因として、加齢、肥満、乗り物での長時間の移動(「エコノミークラス症候群」と呼ばれることもあります)、デスクワーク、長期間の臥床(入院による安静や寝たきり状態など)、脱水などがありますが、これに加えて悪性腫瘍(がん)があります。

つまり、がん患者さんには深部静脈血栓症が多く、そのリスクは一般の人に比べて4~7倍も高いといわれています。

なかでも、膵臓がん(一般の人に比べて9.7倍)、肝臓がん(7.4倍)、卵巣がん(6.2倍)、肺がん(5.2倍)、子宮頸がん(5.1倍)、食道がん(3.5倍)などで非常に高いことが報告されています[35]。また、抗がん剤治療中には、さらに発症リスクが高まるといわれています。

手術前には深部静脈血栓症のチェックを!

このように、がん患者さんでは深部静脈血栓症のリスクが高くなるのですが、とくに術後には肺塞栓症を合併するリスクが高くなるため、手術前にしっかりとチェックすることが大切です。

深部静脈血栓症を発症すると、血液の流れが滞るため、その部位に腫れ(むくみ)がみられます。

片方のふくらはぎが腫れて、脚の太さが左右で違ってくることもあります。また、同時に痛みや熱っぽい感じ、あるいは発赤(赤くなること)などを伴うこともあります。

また、症状がなくてもリスクの高いがん患者さんは、手術前に血液検査(Dダイマーの測定)や超音波検査などで下肢に静脈血栓がないかをチェックします。

ただ、病院によってはこういった検査を行わない場合もありますし、血液検査だけでは見逃すこともあります。

ふくらはぎの腫れ・むくみ(同時に痛みがある、赤くなっている、熱っぽい)、脚の太さの左右差など、気になる症状がある場合には主治医に相談して詳しい検査を受けてください

もし血栓が見つかって事前に治療できれば、手術後に命をおびやかす肺塞栓症がおこるのを回避することができます。

まとめ

がんの手術をひかえた患者さんは、とくに深部静脈血栓症に注意しましょう。

  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医+がん研究者。 産業医科大学第1外科講師。専門は「すい臓がん」。エビデンスと経験に基づいた「患者さんファーストのがん治療」が目標です。ブログ、ツイッター、YouTubeなどでがん患者さんに役立つ情報発信しています!

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