テレビを見すぎると、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高くなると報告されていますが、もっと怖いのは、「がん」のリスクも高くなることです。では、何時間以上テレビを視ると危険なのか?研究を調査しました。
はじめに
先日の動画で、がんの予防のためには、なるべく座らない生活をすることが大切というお話しをしました。
ですから、座って仕事をしている人は、スタンディングデスクなどを使って、できるだけ立って仕事をすることを提案しました。
これは、仕事に限らず、家でも同じ事がいえます。
とくに、今回のコロナ禍で、家庭で過ごす時間が増えて、テレビを視る時間が問題になっています。
最近では、リアルタイムのテレビ番組を見逃したとしても、TVerとかNetflix、アマゾンプライムなどドラマやバラエティ番組、映画の配信サービスも増えて、何時間あっても足りないくらいですね。
テレビを見すぎると、子どもの場合は、視力が低下すると言われていますが、成人では、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高くなると報告されています。
そして、もっと怖いのは、テレビを見すぎると「がん」のリスクも高くなることです。
ですから、テレビを長時間視ている人は要注意ということになりますが、1日何時間視るとリスクが高くなるのでしょうか?
今回は、テレビを見る時間と、がんとの関係についての研究を紹介したいと思います。
テレビの視聴時間とがんとの関係
まずは、アメリカでの研究報告です。
25~42歳までの成人女性およそ9万人を対象として、テレビ視聴時間を調査して、50歳未満の若い人に発症する大腸がんのリスクとの関係を調べた研究です。
テレビを視る時間が1週間に7時間以下(平均すると1日に1時間以下)の人に比べ、7時間以上14時間以下の人は12%、さらに14時間以上の人(1日に2時間以上)では70%近くも大腸がんのリスクが高くなるという結果でした。
最近では、全世界的に若い人の大腸がんが増えているという統計データがありますが、テレビを見る時間が長くなっていることが原因のひとつである可能性があります。
ただ、1日に2時間くらい視てるかもしれないので、ちょっと怖いですね。
日本人での解析
次に、日本人を対象とした研究です。2021年に、Cancer Res Treat という雑誌に報告された論文です。
40から79歳までの日本人の男女およそ9万人を対象に、くわしいアンケート調査をおこなって、テレビの視聴時間など生活習慣を調べました。そして、その後20年近くの観察期間中における大腸がんによる死亡率との関係を解析しました。
当然、テレビを長い時間視る人は、不健康な生活をしていて、肥満になりやすく、また、運動不足の人が多いと考えられます。
ですから、テレビ以外の因子が、大腸がんに関係している可能性もあります。
そこで、そういった因子の影響を除外するために、年齢、性別、喫煙、アルコール、肥満度(BMI)、食事内容、運動する時間などで調整しました。
結果ですが、先ほどの研究結果と同様に、テレビの視聴時間が長くなるにしたがって、大腸がんによる死亡リスクが増加していました。
テレビの視聴時間が1日に1.5時間未満の人に比べて、1.5時間以上3時間未満の人では、大腸がんの死亡リスクが11%、3時間から4.5時間未満の人では14%、そして、4.5時間以上の人では33%も高くなっていました。
テレビの視聴時間が1時間増えるごとに、大腸がんによる死亡リスクが6%増えていました。
ですから、長ければ長いほど、大腸がん(とくに、結腸がんの)リスクが高くなるということでした。
先ほどのアメリカからの研究報告に比べると、そこまでリスクは高くないものの、やはり、テレビを見すぎると、大腸がんのリスクが高くなる可能性があります。
また、同じ日本人の集団を対象とした別の研究では、テレビの視聴時間が長い女性は、乳がんの発症リスクが2倍以上にもなるという結果でした。
まとめ
以上の結果から、可能であれば、テレビを視る時間は1日1時間から1時間半くらいに制限することがいいと思います。
あるいは、減らせない人は、テレビを見ながら筋トレしたり、立って家事をしたり、何かしら体を動かすといいと思います・
というわけで、今回は、テレビを視る時間が長い人は危険?というお話でした。
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