皮膚に出る「がんのサイン」について、今回は、慢性のじんま疹と癌との関係についての研究を紹介します。
はじめに
今回は、皮膚に出る「がんのサイン」についてのお話です。
なんらかの皮膚の病変が、がんのサインとなることが報告されています。
たとえば、前回の動画では、帯状疱疹が、がんの前兆になることがあるというお話をしました。
今回は、より身近な皮膚の病変である「じんま疹」とがんとの関係についてです。
じんま疹とは?
じんま疹とは、皮膚に「膨疹(ぼうしん)」と呼ばれる、赤くて、くっきりとした盛り上がりができて、しばらくすると跡かたなく消えてしまう病気です。
原因としては、食べ物や薬に対するアレルギー反応としておこることが多いのですが、その他にも、運動や暑さ、寒さといった刺激、圧迫や日光などによっても起こるといわれています。
じんま疹は比較的よくある病気で、15~20%の人は一生のうちに一度は経験するといわれています。じつは、私も子どもの頃、じんま疹がよく出ていました。
多くは、一時的なものですが、なかには、毎日のように、じんま疹がくり返しでて、それが1ヶ月以上続く場合もあります。これを、慢性じんま疹と呼びます。
この慢性のじんま疹は、原因が特定できないことがほとんどですが、一部で、がんなど他の病気と関連して発症することがあると報告されています。
今回は、慢性じんま疹とがんとの関係についての研究を紹介したいと思います。
慢性じんま疹とがんとの関係
まずは、2012年にArch Dermatology という雑誌に報告された論文です。
台湾での後ろ向きの集団研究です。
データベースに登録されていた人のうち、抗ヒスタミン薬を6ヶ月以上の長期間使っていた、いわゆる慢性のじんま疹があって、過去にがんや自己免疫疾患、アトピー性皮膚炎あるいは他のアレルギー性の病気がなかった人(合計12,720人)を対象としました。
少なくとも2年以上にわたって、がんの発症の有無を調べました。
その結果、慢性じんま疹の患者さんは、がんの発症率が、一般の国民に比べて、2.2倍に上昇しており、とくに、白血病や非ホジキンリンパ腫といった血液がんのリスクが高く、4倍にもなっていました。
もう一つは、2018年に、J Dermatol という雑誌に報告された論文です。
こちらは、韓国の国民健康保険データベースを使った集団研究で、慢性じんま疹と診断された人のグループを特定しました。
こちらが、年齢別の慢性じんま疹の患者数ですが、10歳以下の子どもに多かったということですが、高齢になるにつれて増えてきて、とくに70代にピークがありました。
この慢性じんま疹がある人のグループと、慢性じんま疹がなかった人のグループの間で、合併する併存疾患を比較しました。
その結果、慢性じんま疹がある人は、ない人に比べ、多くの病気を合併していましたが、多かったのは、アレルギー性鼻炎、薬剤アレルギー、喘息、甲状腺疾患に加えて、がんがありました。
慢性じんま疹がある人では、ない人に比べて、固形がんの罹患率が37%増えていました。
また、がんのなかでも多かったのが、胃がん、甲状腺がん、肝臓がん、そして、前立腺がんでした。
そして最後に、とても興味深い研究を紹介します。
2019年に、J Investig Allergol Clin Immunol という雑誌に報告された論文です。
トルコからの研究報告ですが、慢性じんま疹がある359人の患者さんに、甲状腺の超音波検査を行ったところ、5人の女性に、甲状腺がんが発見されたということです。
しかも、興味深いことに、4人の患者さんでは、甲状腺がんの摘出手術を行ってから、1~2日以内に、じんま疹が完全に消失したということです。
ですから、甲状腺がんとじんま疹のあいだに、なんらかの関係があったということが疑われました。
まとめ
以上の結果より、慢性じんま疹がある人では、がんを合併するリスクが高くなるということでした。
ですから、がんとじんま疹、どちらが先かという問題はありますが、長く続くじんま疹は、がんが潜んでいるサインとして、注意が必要だと思います。
というわけで、今回は、慢性じんま疹はがんのサイン?というお話でした。
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