日本人のあいだで、膵がん(すい臓がん)の患者さんが増えています。この原因のひとつとして、食生活が関与している可能性が指摘されています。では、乳製品で膵がんが増えるのでしょうか?研究結果を紹介します。
はじめに
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品を毎日とっている人もいると思います。
乳製品とがんとの関係については、リスクが低下するという研究結果や、逆にリスクが高くなるという研究結果もあり、統一した見解が得られていません。
また、乳製品の種類やがんの種類によっても結果が違います。たとえば、ヨーグルトの摂取によって、肺がんのリスクが低下するという研究結果がありますが、逆に、乳製品の摂取量が多いと、前立腺がんのリスクが増えるという研究結果があります。
最近、日本人のあいだで、膵がん(すい臓がん)の患者さんが増えています。この原因のひとつとして、食生活が関与している可能性が指摘されています。
これまで、乳製品の摂取と、膵がんとの関係については、よくわかっていませんで、とくに日本人を対象としたエビデンスはありませんでした。
今回、日本人を対象とした、乳製品と膵がんとの関係についての研究を紹介します。
乳製品とすい臓がんとの関係
昨年(2021年) Br J Nutr という雑誌に報告された論文です。
The Japan Collaborative Cohort Study (JACC Study)という、日本における大規模な観察研究です。
40~79歳までの日本人の成人およそ6万人を対象として、食事の詳しい調査を行いました。
代表的な乳製品である、牛乳、チーズ、およびヨーグルトの摂取量を調べて、その後、13年以上にわたる観察期間注における膵がんの発症率との関係を解析しました。
その結果、牛乳、チーズ、およびヨーグルトの摂取量がもっとも多いグループでは、最も少ないグループに比べて、膵がんのリスクについては差がありませんでした。
つまり、乳製品の摂取量と膵がんとの関係はなかった、ということです。
さらに、過去の研究をまとめて解析した結果でも、同様に、乳製品によって、膵癌のリスクは変わりませんでした。
まとめ
これまでの研究では、膵がんのリスクを低下させる食べものとしては、魚(とくにオメガ3脂肪酸)食物繊維、マグネシウムの含まれている食べものが報告されています。
今回の研究では、乳製品もとくに膵がんのリスクを高める食べものではないということですので、心配せずに食べていいと思います。
というわけで、乳製品と膵癌との関係についてのお話でした。
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