がんになるとやせると言います。では、(体重の蓄えがある)太っているがん患者さんのほうが有利なのでしょうか?今回は、とくに高齢のがん患者さんにとって、診断された時点で、どのくらいの体重(BMI)がベストか、という研究結果を紹介します。
はじめに
よく、がんになると痩せるといいます。
確かにそういう場合が多いのですが、とはいえ、がんと診断されたときに、痩せている人ばかりではありません。むしろ、太っている患者さんもいらっしゃいます。
がんになると、治療の過程で体重が減ることが多く、そう考えると、太っているがん患者さんのほうが、体重の蓄えがあるので有利な感じがします。
では、がんと診断された時点で、どのくらいの体格・体重がいいのでしょうか?
今回は、とくに高齢のがん患者さんにとって、ベストの体重はどのくらいか?という研究結果を紹介します。
がん患者にとってベストの体重とは?肺がん患者における研究
2018年に World J Surg という雑誌に日本の医療施設から報告された論文です。
手術を受けた肺がん患者さんのうち、80歳以上の高齢の患者158人について解析を行いました。
まず、術前の患者さんのBMIを測定しました。
BMIの計算式は、体重(kg)を身長(m)の二乗でわったものです。ネットで簡単に計算できるサイトもありますので、調べてみてください。
BMIの値によって、18.5未満(低体重のグループ)、18.5以上~25未満(普通体重のグループ)、25以上(肥満のグループ)の3つのグループに分類しました。
ちなみに、低体重(極端に痩せている人)のグループは、全体の13%、肥満のグループは全体の10%と、そんなに多くはいませんでした。
そして、BMIのグループ間における術後の生存期間を比較しました。
その結果、低体重および肥満のグループはどちらも、普通体重のグループに比べて、生存期間が有意に短くなっていました。
生存期間に影響を与える複数の因子を総合的に評価した多変量解析という解析では、BMIの値が18.5未満または25以上であることによって、死亡リスクがおよそ1.7倍に上昇していました。
つまり、極端にやせていても、太っていても生存期間が短くなっており、適正体重の患者さんが、もっとも長生きした、という結果です。
がんの生存率の低下につながるサルコペニア肥満とは?
じつは、体型については、やせすぎ、太りすぎはどちらもよくないのですが、とくに、太っていて、しかも、筋肉が減っている状態が最悪であると言われています。
この肥満に筋肉量の減少(いわゆるサルコペニア)が加わった状態を「サルコペニア肥満」と言いますが、サルコペニア肥満があるがん患者さんは生存期間が短くなるという報告があります。
実際に、2千人以上の固形がん(呼吸器系および消化管のがん)を対象とした大規模な研究によると、肥満とサルコペニアの両方(サルコペニア肥満)があった患者さんの生存期間は11.3ヶ月で、それ以外の患者さんの21.6ヶ月に比べて有意に短くなっており、死亡リスクが4倍以上に高まるという結果でした。
まとめ
以上、がん患者にとって理想的な体型(体重)とは?というお話でした。
がんでも長生きするためには、適正体重を維持すること、そして、とくに高齢の患者さんの場合、筋肉量を保ってサルコペニアを防ぐことが重要となってきます。
このためには、何度もお話していますが、やはり、運動(有酸素運動と筋トレ)を続ける習慣と、栄養(タンパク質を意識した食事)をしっかりと摂ること。この2点につきます。
以上、がんになっても長生きするために ベストの体重とは?というお話でした。
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