がん手術

手術を受けるなら、男性外科医と女性外科医、失敗しないのはどっち?

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がん患者さんにとって、手術を担当する執刀医が誰になるのかは気になると思います。では、手術を執刀する外科医は、男性、女性のどちらがよいのでしょうか?最新の研究結果を紹介します。

はじめに

もし手術を受ける場合に、執刀する外科医は男性と女性とどちらがいいのか?というお話です。

「どうでもいい」と思う人もいるかもしれませんが、多くのがん患者さんにとって、手術を担当する執刀医が誰になるのかは、性別も含めて気になると思います。ですから、そういった研究を調べた結果を紹介したいと思います。

最近では、医師全体に占める女性(いわゆる女医)の割合は増加傾向にあります。

これは、少し前の厚生労働省の調査ですが、年々、女性医師の割合が増えていて、平成26年の時点で、全国における女性医師の割合が20%を超えています。つまり、医師の5人に1人以上は女性であるということです。

とくに昨今、医学部に入学する女性が増えていますので、今後ますます女性医師の割合が増えていくことが予想されます。

一般的に女性医師の場合、皮膚科、眼科、麻酔科など、外科以外の専門(診療科)に進むことが多いのですが、全体の女性医師の増加に伴って女性の外科医も徐々に増えています。

私が外科医になった20年前には、外科医になる女性医師はほとんどいませんでしたが、最近では、まだ他の科より少ないのですが、女性の外科医が増えていると感じます。

がんの手術を受ける場合においても、女性外科医が執刀医(術者)となる確率が高くなっています。

もちろん患者さんが執刀する医師を選ぶことはできないことが多いとは思いますが、一般論として、男性外科医と女性外科医、どちらに手術を任せるのが賢明なのでしょうか?

今回は、研究論文を紹介しながら、外科医は男性と女性のどちらがいいのかについて考えてみたいと思います。

手術を受けるなら、外科医は女性と男性、どちらがいいか?

まずは、男性外科医と女性外科医の手術の成績を比較した衝撃的な報告からご紹介します。

2017年に、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルという雑誌に報告された論文です。

カナダにおける大規模な後ろ向き研究で、25種類の代表的な手術を受けた10万4630人の患者さんが対象となりました。

手術を行った外科医は3314人、そのうち男性医師が2540人(76.6%)、女性医師が774人(23.4%)でした。

女性の外科医に手術を受けた患者と、男性の外科医に手術を受けた患者について、死亡率、再入院率、合併症の発生率を比較しました。

その結果、なんと女性外科医が手術した患者さんのほうが30日以内の死亡リスクは12%も低いという結果でした。

つまり、女性外科医のほうが、いい結果を得られるという結論です。

この理由についてははっきりとは分かりませんが、女性外科医のほうが男性外科医よりもガイドラインに沿って治療を行う傾向があること、また、コミュニケーション能力が高い可能性があると考察しています。

これは海外でのデータとはいえ、男性外科医の私としては、少し衝撃的な結果ですが、はたして、日本ではどうなのでしょうか?

日本でのデータ

最近、日本人医師を対象とした同じような研究が報告されました。

今年の9月に、同じく、ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルという雑誌に報告された論文です。

National Clinical Database(NCD)という、日本における最大の手術症例のデータベースをもとに、代表的な消化器がんの手術である、胃切除術および定位前方切除術(直腸がんの定型的な手術)を受けた患者さんの術後の成績を男性外科医と女性外科医で比較しました。

全部で、およそ30万件の手術について解析したところ、全体のおよそ95%が男性外科医による執刀で、5%が女性外科医による執刀だったということです。

平均的に、女性外科医は、リスクの高い患者さんの手術を担当することが多く、また腹腔鏡による手術の割合が低かったということです。

術後の合併症および死亡率を、男性外科医と女性外科医で比較したところ、差は無かったという結果でした。

ただし、術式別のデータをみてみますと、直腸がんに対する低位前方切除という手術の場合、女性のほうが、死亡リスクが低い傾向にあるようです。

というわけで、胃がんと直腸がんに限られた術式の比較ですが、日本では、男性または女性の外科医で差はなかったということです。

結論:外科医は男性?女性?どっちがいい?

というわけで、海外での一部の研究では、女性外科医のほうが死亡リスクが低いという結果ですが、日本のおもな消化器がん手術のデータ解析では、術後の成績に外科医の性差は関係なし、ということでした。

女性医師だから失敗が多いということは、ないということです。少なくとも、女性の外科医が担当になった場合でも、心配する必要はないということです。

もしかしたら、女性外科医のほうが、ドクターXのように、失敗しない(失敗が少ない)のかもしれません。

というわけで、執刀する外科医は男性と女性とどちらがいいのか?というお話でした。

 

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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