日本の施設から、コロナに感染したがん患者さんの死亡リスクを高める因子(血液のマーカー)として、〇〇球が重要である、という報告がありました。
はじめに
がんなど基礎疾患のある人が、新型コロナウイルスに感染すると、重症化するリスクが高いということはご存じだと思います。
ただ、すべてのがん患者さんが、重症化あるいは死亡リスクが高くなるわけではありません。
これまでの研究では、がん患者さんのなかでも、高齢の患者さん、血液のがんの患者さん、がんの治療中(おもに抗がん剤治療)の患者さん、こういった方はとくに免疫のはたらきが弱っていることより、リスクが高くなるといわれています。
では、実際に、コロナに感染したがん患者さんの死亡リスクを決める因子とはどういったものでしょうか?
今回、日本の施設から、コロナに感染したがん患者さんの死亡リスクを高める因子として、〇〇球が重要である、という報告がありましたので、紹介します。
コロナに感染したがん患者の死亡リスクを決める因子
Int J Clin Oncol という雑誌に報告された論文です。タイトルは、がんをもつCOVID-19患者の特徴および転帰:東京の単施設での後ろ向き観察研究というものです。
東京都立駒込病院での症例研究で、2020年に入院した、がんの既往があってコロナに感染した患者さん32名が対象です。血液のがんが7人(22%)、固形がんが25人(78%)でした。
全体の患者さんのうち、11名(34%)が亡くなったということです。
生存した例と死亡した例を比較することで、予後(生存率)と関係する血液検査の所見を調べました。
その結果、生存率と有意に相関していた検査項目は、リンパ球数、アルブミン、LDH、血清フェリチン、そして、CRP(炎症のマーカー)でした。
このうち、とくに、リンパ球数と予後との関係が強く、総リンパ球数が少なかった患者さんの生存期間は、非常に短くなっていました。
死亡リスクを比較すると、リンパ球が少ないがん患者さんでは、コロナ感染による死亡リスクが5.7倍にも高くなっていました。
以上の結果から、コロナに感染したがん患者さんの予後を決めるマーカーとして、リンパ球の数が重要であるということが示されました。
一方で、好中球の数については、生存率と有意な相関を認めませんでした。
リンパ球が少ない患者さんがコロナの死亡リスクが高くなるというのは、がん患者に限らず、一般の人でも報告されていることです。
ただ、多くの場合、抗がん剤治療によってリンパ球が減少しますので、がんの患者さんではよりリスクが高くなります。
これはがん治療中の患者さんではどうしようもないことではありますが、リンパ球が減っている患者さんは、とくに感染対策が重要ということになります。
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