たばこを吸っているがん患者さんもいらっしゃると思います。
手術が決まった時には、主治医から「たばこは絶対にダメですよ!」と忠告されたり、あるいはご自分でも「やめなければいけない」ことはわかっていると思います。
ただ、長年のスモーカーにとって、急に止められないこともわかります。
たばこを吸っているがん患者は手術後の合併症が増える
たばこを吸っている人あるいは過去に吸っていた人では、まったく吸ったことがない人に比べ、手術後に合併症がおこるリスクが高くなり、結果的に生存期間が短くなることが多くの研究よりあきらかとなっています。
一般的に、たばこを吸っている人は手術中から手術後に痰が多くでます。この痰が気管支につまって肺がつぶれたり、肺炎になることがあります。
ひどい場合には、手術が終わっても人工呼吸器が外せなくなり、集中治療室(ICU)での治療が必要になることもありますし、重症の肺炎によって命をおびやかす状態におちいることもあります。
とくに、長年の喫煙が原因でおこるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)がある人では肺機能が低下している場合が多く、手術などの治療が制限されるばかりではなく、治療の合併症が増え、結果的に死亡リスクが高くなります。
さらに、手術直前までたばこを吸い続けることで、手術の合併症率および死亡率が増加する可能性があるのです。
例えば、ある研究によると、肺の手術を受けた患者のうち、術後に呼吸に関連した合併症(肺炎など)がみられた割合は、たばこを吸ったことのない人では23.9%であったのに対し、手術直前までたばこを吸っていた人では43.6%と増加していました。
一方で、術前に4週間以上にわたって禁煙をしていた人では、非喫煙者と合併症のリスクが同じレベルまで低下するということでした。
がん患者さんへ!手術が決まったら禁煙しましょう
たばこを吸っている人は、手術が決まったらすぐに禁煙しましょう。
なかには「今まで何十年も吸ってきたので、急にやめることはできない」、あるいは、「がんと告知されたストレスや不安を紛らわすために、たばこはぜったいに必要」という人がいることも理解しています。
しかし、「たばこを吸い続けることによって、死のリスクが高まる」という事実をしっかりと認識してください。同時に、禁煙することで、合併症や死亡リスクを下げることが可能なのです。
たとえ手術までの期間が短くても禁煙の効果はあります。
少なくとも2週間の禁煙をすることで合併症を減らすことができると報告されていますので、一日でも早く禁煙を開始することが大切です。
効果的な禁煙の方法:どうやったら止められる?
禁煙の方法には、大きく分けて自分でやめる方法と、禁煙外来に通う方法があります。
禁煙が成功しない原因として、日本では、いまだに屋内の喫煙所や屋外で比較的簡単にたばこを吸える環境があります。
また、家族などまわりにたばこを吸う人がいることも禁煙の障害となります。
禁煙を成功させるためには、たばこを吸えない環境に身を置くこと、そして家族を含めて周りの人の協力を得ることが大切だと感じています。
また、禁煙を補助するためのニコチンガムやニコチンパッチなどが市販されていますので、これらを利用するのもよいでしょう。
最近では、従来の「燃焼式たばこ」から、非燃焼タイプの「加熱式たばこ」に乗り換える人が増えています。
この加熱式たばこは、発がん物質であるタールが少なく、健康リスクが少ないと言われています。
しかし、「加熱式たばこ」にもニコチンやその他の有害物質は含まれているため、健康に悪影響をおよぼす可能性は高いと考えられます。
いずれにせよ、「たばこは吸わない」と決心することが、手術をのりきり、健康な生活を取り戻すベストの方法です。
禁煙外来のすすめ
自分で禁煙できない人は、病院の禁煙外来を受診することをおすすめします。
禁煙外来では、医師があなたの喫煙歴をきちんと把握した上で、カウンセリングや禁煙補助薬の処方などを行い、禁煙を全面的にサポートしてくれます。
たとえ禁煙中に離脱症状が起こっても、医師に相談することで解決でき、禁煙を続けることができます。
また、ニコチン依存症は病気であるという理由から、一定の条件を満たせば、健康保険等を使って禁煙治療ができます。
くわしくは、お近くの病院の禁煙外来にお問い合わせください。
まとめ
がんの手術を控えた患者さんへ、勇気を出して、たばこは今すぐ止めましょう!
この記事の内容は、『がん手術を成功にみちびくプレハビリテーション:専門医が語る がんとわかってから始められる7つのこと(大月書店)』をもとに執筆しています。
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