骨粗鬆症の治療薬として、ビスフォスフォネート(ビスホスホネート)製剤というのがあります。このビスフォスフォネートには抗がん作用があることがわかっています。今回、乳癌の発症リスクを半減する効果が確認されたという研究結果を紹介します。
はじめに
骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
日本には約1000万人以上の患者さんがいるといわれていて、高齢化に伴って、その数は増加傾向にあります。
骨粗鬆症の治療薬として、代表的なものに、ビスフォスフォネート製剤というのがあります。
薬品名は、ボナロン、リカルボン、アクトネル、ボンビバなどですが、こういった錠剤だけでなく、注射用製剤もあります。
ビスフォスフォネートは破骨細胞による骨吸収を阻害する薬で、骨粗しょう症の予防や治療だけでなく、がんの骨転移による症状の緩和目的にも使用されます。
じつは、このビスフォスフォネートには抗がん作用があり、乳がん患者における生存率の改善効果が確認されています。
また、ビスフォスフォネートを使用している人では、膵臓がんの発症リスクが21%低下していたという報告があります。
では、乳がんについてはどうでしょうか?
今回は、非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断されたことがあり、乳がんのリスクが高い女性における乳がんの発症率とビスフォスフォネートとの関係についての最近の研究を紹介します。
ビスフォスフォネートによる乳癌の発症リスク低下
2021年にCancer Resという雑誌に報告された論文です。
非浸潤性乳管がん(DCIS)の既往がある女性で、後に、乳がんを発症した301人と、DCISの既往があって乳がんを発症しなかった女性587人を比較した研究です。
ちなみに、このDCISとは、乳がんの前癌病変で、DCISと診断された女性では、乳がんになるリスクが高くなることがわかっています。
結果ですが、ビスフォスフォネートを使用したことがない人に比べて、現在、ビスフォスフォネートを使用している人では、乳がんの発症リスクが50%も減少していました。
さらに、現在使用してるかどうかにかかわらず、48ヶ月以上(4年以上)ビスフォスフォネートを使用していた人は、乳がんの発症リスクが55%減少していました。
つまり、長期にビスフォスフォネートを使用することで、乳がんのリスクが半減するということでした。
今後、DCISの既往があり、リスクが高い女性において、この骨粗鬆症の薬には、乳がんのリスクを低下させる効果が期待されると結論づけています。
というわけで、今回は、骨粗鬆症のあの薬で乳がんのリスクが半減、というお話でした。
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