がんの治療では、残念ながら再発することもあります。ただ、知っておいて欲しいのは、がんの再発は決して「死の宣告」ではないということです。がん再発にもパターンがあり、治療によって長期生存が期待できるものもあります。今回は、余命(予後)と関係する「がん再発」4つのパターンを紹介します。
はじめに
今回は、がんの再発についてのお話しです。
がんの治療では、必ずしも期待する結果が得られるとは限りません。たとえベストの治療を選択したとしても、残念ながら再発することもあります。
ただ、知っておいて欲しいのは、がんの再発は決して「死の宣告」ではないということです。
じつは、再発といっても、色々なタイプがあって、そのタイプは、患者さんの予後(生存期間)に関係してきます。
中には、治療によって、長期生存が期待できる再発パターンもあります。
じっさいに、がんが何度も再発したにもかかわらず、その度に治療を受けて、長生きされているサバイバーの方もいらっしゃいます。
そこで、今回は、代表的な再発のパターンを4つ紹介して、治療や予後との関係を解説したいと思います。
がん再発とは?
まずは、そもそも、がんの再発とはどういう状態をあらわすのか、ということです。
「再発」とは、手術で取りきれていなかった目に見えない小さながんが再び現れたり、薬物療法(抗がん剤治療)や放射線治療でいったん縮小(または消失)したがんが、再び大きくなったり、最初にできたところと別の部位・臓器に出現することをいいます。
つまり、治療後、または治療の途中で、いったんは治療がうまくいっていたがんがぶり返すことです。一部のがんでは「再燃」と呼ぶこともあります。
がんの再発には、いくつかのパターンがあります。
代表的な再発のパターンを4つあげて、治療や予後との関係についても解説します。
がん再発のパターン4つ
1.局所再発
最初にがんがあった部位やその周辺(局所といいます)に、再びがんが出現することです。典型的な例が、手術で取りきれなかったがんが、大きくなることです。
これが一番、皆さんの思っている「再発」のパターンだと思います。
局所再発に対しては、場所にもよりますが、手術や放射線治療ができることもあります。
この場合、再び根治(治癒)を目指すこともできますし、上手くいけば、予後は良好といえます。
2.リンパ節再発(領域再発)
リンパ節にかくれていたがん細胞が増えることです。一般的には、リンパ節が大きく腫れてきます。
がんの手術では、がんの近くのリンパ節を一緒に切除しますが、取り残しがあったり、切除したリンパ節よりも遠くのリンパ節にがんが潜んでいることもあります。
これが、手術などの治療後に、大きくなる場合があります。
リンパ節再発に関しては、数や部位によっては、放射線治療などができることがあります。
その場合、局所治療と同様、長期にわたって再発をコントロールできる可能性があります。
3.遠隔転移(血行性転移)
がん細胞が血管に入り、血液を介して別の臓器に移動し、そこで大きくなることです。
この場合、転移が例えば、1つの臓器に限定していて、また2~3個以内の小数であれば、手術による切除や放射線治療などの局所治療を試みることがあります。
こういった小数の転移のことをオリゴメタといいますが、積極的な治療によって予後が改善するという報告があります。
一方で、複数の臓器にまたがって、たくさん転移がある場合には、全身にがんが広がっていると考えられますので、一般的に治療が難しく、予後は悪くなります。
4.播種(はしゅ)性再発
原発巣からこぼれ、胸の中の空間(胸腔内)や、おなかの中の空間(腹腔内)に散らばったがん細胞がかたまり(結節)を作ったり、水が貯まったりすることです。
あるいは、髄膜播種といって、がん細胞が「くも膜下腔」へ侵入して、髄液のなかに広がることもあります。
このタイプの再発は、なかなか有効な治療法がないのが現状で、最も予後が悪いとされるパターンです。
まとめ
これらの再発パターンは、単独でおこることもありますし、いくつかのパターンが同時にみられることもあります。
がん再発のパターンによって、治療法や再発後の生存期間も大きく違ってきます。
局所再発やリンパ節再発では、局所治療が選択できることがありますし、上手くいけば、長い期間にわたって再発をコントロールできる可能性があります。
ですので、がんが再発した場合には、どこにどういったタイプの再発があるのかをしっかりと把握することが重要です。
また、最初にも言いましたが、がんの再発は決して「死の宣告」ではありません。
治療の可能性について、主治医や、必要があればセカンドオピニオンの医師と、よく相談してください。
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