がんが再発する時期として、早期の再発と、晩期(おそい時期)の再発があります。治療後10年以降に再発した乳がんの患者さんを対象とした研究結果が報告されましたので、紹介します。
はじめに
がん患者さんからの質問で、「再発してしまったのですが、あと何年生きられますか?」というのがあります。
答えは、「正直わかりません」ということなんですが、再発した後の生存期間というのは患者さんによって大きく違うというのが本当のところです。
がん再発後の生存期間に影響する要因にはいろいろありますが、とくに、重要な因子として、再発の時期(再発までの期間)があります。
がん再発の時期が予後に影響
がんが再発する時期として、早期の再発と、晩期(おそい時期)の再発があります。
以前の動画でお話しましたが、がん再発までの期間が、その後の生存期間に影響するということが報告されています。
たとえば、大腸がんの患者さんで、手術後1年以内に再発した患者さんでは、1年より後に再発した患者さんに比べて、生存期間が短くなるということです。
再発の時期というのは、がんの種類によっても違うわけですが、乳がんでは、再発までの期間が長いケースがあります。たとえば、手術後10年以降に再発することもあります。
こういった、いわゆる「遅く再発した」患者さんのまとまったデータというのはこれまで少なくて、予後に関する情報はありませんでした。
今回、治療後10年以降に再発した乳がんの患者さんを対象とした研究結果が報告されましたので、紹介します。
乳がん10年以降の晩期再発の生存期間は?
今年(2022年)の2月にJ Clin Oncolという雑誌に報告された論文です。
デンマークからの研究になりますが、乳がん患者さんの再発の時期とその後の生存率を調査した研究です。
デンマークと日本で大きく治療法が異なる訳ではありませんので、日本でも同じような結果になると考えていいと思います。
手術後10年以内に再発した患者さん(1528人)と、10年以降に再発した患者さん(2004人)に分けて、比較しました。
その結果、10年以内に再発した患者さんの、その後の生存期間の平均(中央値)は、4年だったのに対して、10年以降に再発した患者さんの生存期間は10年と明らかに長くなっていました。
また、再発後の10年累積死亡率は、早く再発した患者さんで72%でしたが、おそく再発した患者さんでは50%(下図)でした。
さらに、予後に影響する因子を解析したところ、おそく再発した患者さんが長生きできる因子として、最初の診断のときに乳房温存手術を受けていること、局所再発(もともとがんがあった部位への再発)、再発がんに対して手術ができたということです。
一方で、最初の診断時に進行がんであったこと、そして、再発のパターンが遠隔転移であることなどが、おそく再発した患者さんが長生きできない(死亡リスクを高める)因子でした。
以上の結果から、まずは、再発の時期がとても重要で、そして、最初の診断時のステージや治療法、再発のパターンなどで、再発後の予後は大きく左右されるということです。
まとめ
乳がんの場合、10年以降におそく再発した患者さんでは、その後の生存期間は10年(中央値)という結果でした。
もちろん、これは平均的な期間ですので、それより短い場合もあれば、長い場合もあるということです。
また、今後、再発したがんに対する治療法がもっと増えてくると、さらに生存期間も長くなることが期待されます。
#再発 #乳癌 #10年 #再発後の生存期間
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