ダイエットのために、砂糖入りの飲み物を控えて、人工甘味料が入った「ダイエット〇〇」、「〇〇ゼロ」といった「ダイエット系炭酸飲料」を飲んでいる人もいると思います。人工甘味料とがんとの関係はよくわかっていませんでしたが、最近フランスから報告された大規模な前向き研究によると、人工甘味料も摂りすぎるとがんになるリスクが高まるということです。
はじめに
ダイエットのために、砂糖入りの飲み物を控えて、ダイエット〇〇、〇〇ゼロ、といった「ダイエット系炭酸飲料」を飲んでいる人もいると思います。
こういう、「シュガーレス」、「カロリーゼロ(低カロリー)」「糖質オフ」といった飲料や食品のなかには、人工甘味料が入っていることはご存じだと思います。
砂糖が入った飲み物(加糖飲料)が、肥満や糖尿病だけでなく、がんのリスクを高めることは多くの研究から明らかになっています。一方で、人工甘味料とがんとの関係については、いくつかの研究はあったものの、これまでに大規模な研究調査はありませんでした。
このほど発表された大規模なフランスの疫学研究によると、人工甘味料の摂取もがんのリスク上昇に関係していることが分かりました。
人工甘味料の摂取はがんリスクを高める
2022年3月にPLoS Medicine という雑誌に発表された論文です。
フランスの10万人以上の国民(平均年齢が42歳)を対象として、食事・栄養と健康・病気との関係を調査する大規模な前向き研究です。
くり返し行った食事の記録についての調査から、ブランド名も含めた人工甘味料の摂取量を計算し、その後、およそ8年間にわたって追跡調査して、がんの発症リスクとの関係を解析しました。
人工甘味料の摂取源として最も多かったのは、砂糖が入っていないダイエット系の飲料水で、全体の53%と半数以上を占めていました。次いで、卓上甘味料が多く、約30%でした。
人工甘味料の種類については、アスパルテームが最も多く、58%、次いで、アセスルファムK(カリウム)の29%、スクラロースの10%でした。
そして、がんに関係する様々な因子(年齢、性別、教育、身体活動量、喫煙、BMI、糖尿病、がんの家族歴、アルコール摂取、砂糖の摂取量、果物・野菜の摂取量など)で調節して解析を行いました。
その結果、人工甘味料を摂取していない人に比べて、人工甘味料を多く摂取している人(具体的には、摂取量の中央値よりも多い量)では、がんの発症リスクが13%増加していました。
とくに、アスパルテーム、アセスルファムKを多く摂取している人で、がんのリスクが増加してたということです。
がんの種類別にみると、乳がんのリスクが22%(アスパルテーム)、そして、肥満関連のがん(大腸がん、子宮体がん、前立腺がんなど、肥満が原因のひとつと言われているがん)が13%ということでした。
以上の結果から、人工甘味料(なかでも、アスパルテームとアセスルファムK)は、摂りすぎると、がんのリスクが増える可能性があると結論づけています。
人工甘味料の健康への悪影響
また、がんに限らず、人工甘味料の健康への悪影響を警告する研究は他にもあります。
たとえば、人工甘味料入りの炭酸飲料を毎日のように摂取していると、それらを全く飲まない人に比べ、脳卒中と認知症のリスクが2倍から3倍に高まることが、アメリカの研究で示されました。
さらに、注意しないといけないのは、人工甘味料飲料はすべての原因による死亡率を高めるという研究結果があることです。
ヨーロッパ10カ国の約45万人を対象とした、大規模な前向き研究によると、砂糖入り飲料を多く飲む人では、すべての原因による死亡リスクが8%増加していましたが、人工甘味料入り飲料を多く飲む人では、なんと26%も増加していました。
とくに、人工甘味料入り飲料を多く飲む人では循環器系の病気で死亡するリスクが高くなるということでした。
まとめ
このような研究結果からは、やはり、加糖飲料も、人工甘味料入り飲料も控えたほうがいいということで、ダイエット飲料だから健康にいいということは決してないということですね。
何でもそうですが、程度の問題で、清涼飲料水に関しては、毎日飲んでいる人は、週に1本に減らしたり、あるいは、お茶やコーヒーに変えるなどしてみてはいかがでしょうか?
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