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がん死亡リスクが上昇する尿の異常とは?微量「たんぱく尿」とがんとの関係

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色々な基礎疾患(持病)や検査値の異常があると、がんの死亡リスクが高くなるという報告がありますが、尿検査の異常「たんぱく尿」があると、どのくらい死亡率が高くなるのでしょうか?

はじめに

色々な基礎疾患(持病)があると、がんの死亡リスクが高くなるという報告があります。

たとえば、糖尿病の患者では、がんによる死亡率が25%高くなるという報告や、高血圧があると、がんによる死亡率が20%程度上昇するといった報告があります。

また、慢性腎臓病もがんのリスクを高めるという報告があります。

では、腎臓が悪いと、どのくらいがんのリスクが高くなるのかについて、調べてみました。

腎機能障害(たんぱく尿)とがんとの関係

まずは、2018年に、BMJというイギリスの一流医学雑誌に報告された、台湾における40万人以上を対象とした前向き試験を紹介します。

この研究では、慢性の疾患や検査値異常があると、がんの罹患リスクおよび死亡リスクがどのくらい高くなるかを調査しました。

尿検査で、尿たんぱくが陽性の人を、「慢性の腎臓病あり」と定義しました。
尿検査では、一般的に、尿糖、尿たんぱく、尿潜血などの検査項目がありますね。

その結果、尿たんぱくが陽性の人では、その後、がんの罹患リスクが12~21%上昇し、がんによる死亡リスクが35~70%も上昇していました。

そして、最近、日本からも同様の報告がでました。

2021年の8月にScientific Reports という雑誌に報告された論文です。

奈良県立医科大学の研究チームは、特定健診を受けた日本人の成人37万人以上(年齢の中央値64歳)を対象として、たんぱく尿とがんによる死亡の関係を調査しました。

検査紙を用いた、たんぱく尿検査の結果が、(-)は陰性、(±)は微量たんぱく尿、(1+)は軽度たんぱく尿、(2+)以上は中等度から重度のたんぱく尿と定義しました。

結果ですが、尿検査で陰性だった人と比較して、たんぱく尿の程度が高くなるにつれて、がんで死亡するリスクは有意に上昇していました(表参照)。

なんと、微量たんぱく尿の人でも、がんによる死亡リスクが1.16倍(16%)、軽度たんぱく尿の人では1.47倍(47%)、そして、中等度から重度のたんぱく尿の人では1.61倍(61%)と高くなっていました。

また、がんの種類別の解析では、微量たんぱく尿の人においてリスク上昇が有意だったのは血液がんで、血液がんによる死亡リスクは、陰性の人に比べ1.59倍でした。

軽度たんぱく尿と中等度~重度のたんぱく尿の人では、血液がん、尿路系がん、消化器がんのリスクが有意に高くなっていました。

以上の結果から、たとえ微量でも、たんぱく尿が陽性の人では、将来的にがんで死亡するリスクが増える可能性があると結論づけています。

まとめ

たんぱく尿が陽性の人は、たとえ微量(プラスマイナス)でも、将来的にがんの発症リスクが高くなるという研究結果でした。

健康診断の結果で、たんぱく尿を指摘された人は、できれば、かかりつけ医に相談するか、がん検診などを積極的に受けてもらいたいと思います

 

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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