日本のなかでも、がんの死亡率が高い地域と低い地域があります。がん死亡率が高い都道府県の上位5つを紹介します。
はじめに
以前の動画で、日本では年間およそ100万人が新たにがんと診断されていて、年々、がんの罹患者と死亡者が増えているというお話をしました。
これは日本全体での話ですが、じつは、日本のなかでも、がんの死亡率が高いところと、低いところがあります。つまり、がんにも地域格差があるんです。
たとえば、男性では、都道府県による死亡率の格差は最大で1.4倍もあるということです。
では、日本のなかで、がん死亡率が高い都道府県はどこでしょうか?
今回は、がんの死亡率が高い都道府県の上位5つを紹介し、国立がん研究センターの松田智大(ともひろ)先生の著書「がんで死ぬ県、死なない県」を参考に、どうして地域格差が生まれるのかという背景についてもお話したいと思います。
がん死亡率が高い都道府県
国立がん研究センターによる2020年の統計データをつかって、(75歳未満)年齢調整がん死亡率が高い都道府県を見ていきたいと思います。ちなみに男性と女性で若干違いますが、今回は、男女合わせた順位です。
5位 大阪府
まずは5位で、大阪府です。
標準化した比が、全国を100としたとき、107ということでした。
大阪府で目立つのは、男女ともに肝臓がんが多く、男性では膀胱がん、女性では肺がんが多いということです。
大阪府でがん死亡率が高い理由として、もっとも考えられることは、がん検診の受診率が非常に低いということです。
また、大阪府のなかでも地域格差が大きいことが問題になっていて、がんの罹患率も死亡率も、経済的に貧しい地域では高いということです。
4位 福岡県
つづいて4位は、私が住んでいる福岡県(107)です。ちょっとショックですね。
福岡県では、男女ともに、予後の悪い肝臓がんと肺がんがとても多いことが、この死亡率の上昇に影響しています。
以前から、九州は肺がんが多い地域と言われてきたそうですが、とくに九州北部は炭鉱が多かったので、その影響もあるのかもしれないとのことです。あとは、産業がさかんだったことから大気汚染の可能性も排除できないということです。
3位 秋田県
3位は、秋田県(109)です。
秋田は、全国ワーストのがん罹患率だそうで、男女ともに、食道がん、胃がん、大腸がん、胆のう・胆管がん、膵臓がんなどが多いということです。
このうち、胃がんのリスク因子として、塩分の摂取量がありますが、秋田県は、「しょっぱいもの好き」ということで、塩分摂取量が、全国平均よりも多いということです。
あとは、秋田県はがん検診を積極的に行っているそうで、このため、がんがたくさん見つかって、数字上、がんの死亡率が高くみえている可能性もあるとのことです。
2位 北海道
2位は、北海道(113)です。
北海道では、頭頸部のがんが多いということです。これは、顔面から首のつけねまでのがんですが、喫煙(たばこ)の影響を受けるがんです。
北海道では、他にも肺がんなど喫煙でリスクが高くなるがんが多いのですが、喫煙率が全国1位ということも関係しているようです。
1位 青森県
1位は、青森県で、標準化比は124とダントツでした。
青森県は、がんの罹患率はそれほどでもなく、「かかりやすさ」は平均的ですが、死亡率が高いことが問題となっています。
つまり、全国でもっともがんで「亡くなりやすい県」ということです。
青森県は、がんと診断されたときに、いわゆる「進行がん」になっている人が多いそうです。
この理由としては、はっきりとしたことはわかっていませんが、青森では、がんの専門病院までの交通アクセスが悪いことや、「病院嫌い」な人が多いことなどが考えられています。
というわけで、がん死亡率の1位は、青森県でした。
がん死亡率が高い都道府県6位~10位
ちなみに、6位から10までを紹介すると、
6位が、長崎県(女性では3位です)
7位が、岩手県(女性では4位です)
8位が、福島県
9位が、埼玉県
10位が、香川県
でした。
これ以外にも、がんの部位別には、
胃がん・・・東北地方の日本海側で死亡率が高い。
肝臓がん・・・西日本で死亡率が高い。
肺がん・・・男性は近畿地方で死亡率が高い。
乳がん・・・大都市圏および東日本で死亡率が高い。
白血病・・・九州・沖縄地方で死亡率が高い。
といった傾向があるようです。
以上、がんの死亡率が高い都道府県をみてきました。
まとめ
こういったデータをみて、「死亡率が高い地域に住んでいるから心配」とか、「低い地域だから大丈夫」ということではなく、地域差が生まれる背景をふまえて、自分自身の生活習慣やがん検診の受診を見直すきっかけにしていただければと思います。
というわけで、がん死亡率 高い都道府県というお話でした。
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