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がん死亡リスクが50%も減るタンパク質の摂取量とは?最新の研究結果より

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タンパク質が不足すると、筋肉量が減ったり、免疫機能が低下して感染症が増えるといわれています。一方で、タンパク質の摂取量とがんとの関係についてはよくわかっていませんでした。今回、最新の研究から、タンパク質の種類、量とがん死亡率との関係が明らかになりました。

はじめに

3大栄養素のひとつ、「タンパク質」ですが、からだに欠かせない栄養素として、とくに高齢者では「タンパク質」を摂りましょうという意識が高まっています。

最近の健康志向から、サプリメントとしての「プロテイン」や、タンパク質が入った「プロテインバー」といったスナックも人気です。

ただ、病気を防いで健康を維持するためには、どういった種類のタンパク質を、どのくら摂ったらよいか、ということは意外と知られていません。

タンパク質が不足すると、筋肉の量が減ったり、免疫の機能が低下して感染症にかかりやすくなることがあります。

一方で、タンパク質を摂りすぎても、腎臓に負担になるといわれています。

がんも、筋肉の量や免疫機能と深く関係していますので、タンパク質の摂取量によってリスクが変わってくることが予測されますが、これまでは研究が少なく、よくわかっていませんでした。

今回は、最新の研究から明らかとなった、タンパク質の摂取量とがんの死亡率との関係について解説します。

タンパク質の摂取量とがんの死亡率

J Hum Nutr Diet という雑誌に報告された最新の論文です。

オーストラリアの、70歳以上の地域の高齢男性を対象として、食事内容の詳しい調査から、動物性および植物性タンパク質の摂取量を計算しました。

このタンパク質の摂取量と、がん、心血管病を含めた死亡率との関係を調査しました。

その結果、総タンパク質の摂取量とがん死亡率との関係は、少なくても、多くても、がんの死亡リスクが高くなっていて、このようにU字型になっていました。

がんのリスクがもっとも低くなるのは、1日およそ80~90gタンパク質を摂取しているグループで、最も少ない(80g未満の)グループに比べて、がんの死亡リスクが53%も減っていました

体重60Kgとしても、1Kgあたり1.5グラムのタンパク質になりますので、結構な量になります。

次に、動物性と植物性に分けての解析です。

まず、動物性タンパク質の摂取については、摂取量が増えると、がんの死亡リスクが上昇することが分かりました。

最も動物性タンパク質の摂取が多いグループでは、がんによる死亡リスクが23%高くなっていました。

次に、植物性タンパク質の摂取については、摂取量が増えると、逆にがんの死亡リスクが低くなっていました。

もっとも植物性タンパク質の摂取量が多いグループでは、がんの死亡リスクが28%低下していました。

まとめ

以上の結果をまとめると、総タンパク質の摂取量では、1日およそ80~90gが最もがんの死亡リスクが低く、少なすぎても多すぎてもリスクが高くなるということでした。

また、動物性タンパク質は、摂りすぎるとがんの死亡リスクが高くなり、植物性タンパク質は多く摂る方ががん死亡リスクが低くなっていました

というわけで、とくに高齢者では、植物性を中心に、タンパク質はしっかりと摂るべきであるという結論です。

植物性のタンパク質は、豆類(とくに豆腐や納豆、豆乳などの大豆食品)に多く含まれていますので、意識して食べることをおすすめします。

 

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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