海外のガイドラインによると、がん患者さんは、「中ぐらい」の運動を週にすくなくとも150分間(2時間30分)、または「はげしい」運動を週にすくなくとも75分間(1時間15分)おこなうことが推奨されています。
はじめに
がん患者さんには、運動するメリットがたくさんあります。
- 運動するがん患者の方が予後が良い(再発が減る、生存期間が延長)
- 筋肉やせ(サルコペニア)を予防
- 筋肉から分泌される物質(マイオカイン)が抗がん作用を持つ
- 運動によってNK細胞などの免疫細胞が活性化
- カヘキシア(悪液質)を予防
こういうメリットを考えると、禁止されている方を除いて、がん患者さんには運動をおすすめです。
では、がん患者さんは「どういった運動をどのくらいすべきか?」という質問があります。
がん患者さんの理想の運動とは
がん患者さんは「どういった運動をどのくらいすべきか?」
じつは、この問いに対する答えはありません。
その人にあった運動を続けてもらえればいいと思います。
ただ、それではわからないという人もいるかもしれませんので、一般的な指針(ガイドライン)を紹介します。
2012年に米国対がん協会(American Cancer Society)が、がん患者さんのための食事と運動ということで、ガイドラインをつくっています。
【注】2022年に最新の改訂版がでました。
2012年のガイドラインについては日本語訳の本がでていますので、もしくわしい内容が知りたい方は読んでみて下さい。
このガイドラインによると、成人がん患者(18歳から64歳まで)では、
「中ぐらい」の運動(下表)を週にすくなくとも150分間(2時間30分)、
または、「はげしい」運動(下表)を週にすくなくとも75分間(1時間15分)
することが望ましい、としています。
ちなみに「中ぐらい」の運動とは、運動しながら話すことはできるが、歌うことはできない程度、「はげしい」運動とは、止まって息をしないと2~3語しかしゃべれない程度の運動とのことです。
65歳以上の患者さんも、可能であれば同様な運動が望ましいが、慢性の病気によって制限がある場合には、長時間の運動は避けたほうがよいとなっています。
つぎに、「中ぐらい」と「はげしい」運動の具体例を以下に紹介します。
まずは「中ぐらいの運動」です。
- 社交ダンスとライン・ダンス
- サイクリング(平地または少しの上り坂がある場所)
- カヌー
- ガーデニング(庭そうじ、木の剪定)
- ボールを使ったスポーツ(野球、ソフトボール、バレーボール)
- テニス(ダブルス)
- 手動車椅子での移動
- 自転車のペダル踏み運動器(エアロバイクあるいはエルゴメーター)
- 早足歩き
- 水中エアロビクス
次に、「はげしい運動」です。
- エアロビクスダンス
- サイクリング(時速10マイル(16キロメートル)以上)
- はげしいダンス
- きついガーデニング(土掘り、くわを使う)
- 上り坂のハイキング
- なわとび
- 武道(空手など)
- 競歩、ジョギング、またはランニング
- たくさん走るスポーツ(バスケットボール、ホッケー、サッカー)
- スイミング(早く、または何往復も)
- テニス(シングル)
以上です。
これらの中から、自分にあった運動を楽しくやってもらえればいいと思います。
まとめ
がん患者さんに推奨される運動は、「中ぐらい」の運動を週にすくなくとも150分間(2時間30分)、または「はげしい」運動を週にすくなくとも75分間(1時間15分)です。
今は、コロナ禍で、あまり本格的な運動はできないかもしれませんが、室内でもできる運動を選んでいただきたいと思います。
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