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がん患者にみられるむくみ(浮腫)の原因と対策:医師が解説

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がん患者さんにみられる症状として、むくみ・浮腫があります。これは、リンパ液や血液の流れが悪くなり、全身または局所の組織に水が貯まった状態です。乳がん、子宮頸がん、前立腺癌の手術後にみられる後遺症であるリンパ浮腫もあります。今回はむくみ、リンパ浮腫の原因と対策、治療について解説します。

はじめに

がん患者さんにみられる症状として、むくみ・浮腫(ふしゅ)があります。

これは、リンパ液や血液の流れが悪くなり、全身または局所の組織に水が貯まった状態です。

栄養失調や臓器の機能障害で全身性にむくみが出現する場合もありますし、手術などの治療後に手や足がむくむ場合(リンパ浮腫)もあり、その原因はさまざまです。

むくみがひどくなると手や足がパンパンに腫れて日常生活に支障をきたします。

また、感染を合併すると蜂窩織炎(ほうかしきえん)というひどい炎症をおこすこともあります。

むくみは軽く見られがちですが、生活の質(クオリティオブライフ)を低下させる原因となります。

そこで、今回はがん患者さんにみられるむくみの原因と予防・治療について解説します。

がん患者にみられるむくみ(浮腫)の原因

がん患者さんにみられるむくみ(浮腫)の原因はさまざまです。

また、はっきりとした原因がわからないこともあります。

以下に、代表的なむくみ(浮腫)の原因をあげてみます。

1.栄養障害(低アルブミン血症)や貧血

がん患者さんでは、栄養障害や貧血をともなうことが多いのですが、これらは全身性の浮腫の原因となります。

とくに、タンパク質の一種であるアルブミンの不足により、浮腫が生じるケースがよくあります。

2.臓器機能障害(心不全、腎不全、肝硬変)

心臓、腎臓、あるいは肝臓の機能が低下した場合に、全身に浮腫がみられることがあります。

心不全では、全身の血液が心臓に戻りにくくなるためにむくみがおこりますが、その他の症状として動悸や息切れ、呼吸困難が出現することがあります。

腎臓や肝臓の機能低下では、やはりアルブミンが低下して浮腫の原因となります。

3.治療の後遺症(リンパ浮腫)

おもにリンパ節の郭清(切除)によっておこる合併症・後遺症で、リンパ浮腫と呼ばれます。

たとえば、乳がん、子宮がん、前立腺がんなどで腋窩(わき)やそけい部(足の付け根)のリンパ節を切除することで、リンパ液のもどりが悪くなり、手や足に浮腫がおこることがあります。

また、放射線治療をした部位に、むくみが出ることもあります。

4.抗がん剤の副作用

抗がん剤の副作用で浮腫がおこることがあります。

とくに乳がんに使われるタキサン系薬剤(たとえばタキソテール)で浮腫がおこることが多いとされます。

5.がんの進行によるもの

がんが進行し、腹膜播種(ふくまくはしゅ)や広い範囲でリンパ節転移をおこした場合などに、局所(とくに下半身)の浮腫がみられることがあります。

これは、がんによってリンパや血液の流れがよどむことでおこります。

いわゆるがんの末期では、胸やお腹に水がたまることがあるのですが、同時に、むくみが出現し、徐々に悪化していきます。

6.過剰な水分摂取

単純に水分をとりすぎたり、過剰な点滴をすることで、むくみがでることがあります。とくに腎臓の機能の悪い人ではむくみがひどくなります。

がん患者のむくみ(浮腫)の予防・治療法

つぎに、むくみ(浮腫)の予防・治療法です。

栄養状態・貧血の改善

栄養状態を改善し、タンパク質をしっかりとることで、浮腫が軽くなることがあります。

鉄欠乏性貧血がある場合には、鉄分が豊富に含まれている食べ物や鉄剤の補充を行います。

またカリウムを豊富に含む果物(バナナ、アボカドなど)や野菜(パセリ、ほうれん草など)をとることで、尿を増やし、浮腫を予防することもできます。

ただし腎機能の悪い人はカリウム制限が必要になることがありますので注意してください。

利尿剤(りにょうざい)

浮腫の治療として、ラシックスといった利尿剤(尿をたくさんでるようにする薬)を使うこともあります。

主治医と薬の治療について相談してください。

マッサージ

強くもむのではなく、末梢(手足のさき)から中心(心臓側)にむかって、やさしく、なでるようにマッサージします。

とくにぬるめのお湯につかってリラックスしておこなうとよいでしょう。

また、病院などで専門的なリハビリテーションやリンパマッサージ(リンパドレナージ)を受けることができます。

軽い運動

手足を使った軽い運動は、むくみを予防したり、治療に有効です。

きつくない程度のウォーキング(とくに水中ウォーキング)などが適しています。

また、足がむくんでいるときは長い時間歩いたり、立ったままでいることは避けましょう。

患肢(むくんだ手足)の挙上

むくんだ手足を上にあげることで浮腫を予防または治療できます。

たとえば休むときは足の下にまくらや座布団などを入れ、できるだけ足を高くしましょう。

弾性ストッキング

弾性ストッキングをはくことで足の浮腫が軽快することがあります。

医療用の弾性ストッキングについては病院で主治医または看護師に相談してください。

まとめ

以上まとめますと、むくみ・浮腫は、心不全といった重大な病気の症状や、治療の副作用・後遺症のことがあります。

「むくみが気になる」あるいは「急に体重が増えたな」と思った場合には、遠慮せずに主治医に相談しましょう。専門的な治療が可能な場合もあります。

日常生活においては、タンパク質をしっかり摂り、同時に尿の量を確保すること、また局所的なむくみの場合には患部をできるだけ高くすることを心がけてください。

これらの対策でむくみを予防あるいは軽減することが可能です。

 

#乳癌 #リンパ浮腫 #副作用

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外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。
  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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