がん患者さんが経験する症状(たとえば、疲労感や手足のしびれ)は、生活習慣によって悪化したり、軽快することがわかっていますが、じつは、食事によって影響を受けることがあります。今回は、がんの症状が、ある食品で悪化するという最新の研究結果を紹介します。
はじめに
がん患者さんにとって、治療中や治療後に症状を少しでも軽くして、日々の生活の質を高めることは、とても重要な課題です。
多くのがん患者さんが経験する症状(たとえば、疲労感や手足のしびれ)は、生活習慣によって悪化したり、軽快することがわかっていますが、じつは、食事によって影響を受けることがあります。
今回は、大腸がんサバイバーを対象として、治療後の食事内容と症状との関係についての最新の研究結果を紹介します。
がんの症状が悪化する食品
2022年の9月に、Br J Nutr という雑誌に報告された論文です。
ステージ1から3までの大腸がん患者さん396人を対象として、治療後6週間から24ヶ月後までの食事内容(とくに、不健康な食べものの摂取量)と、生活の質、疲労感、および、抗がん剤による末梢神経障害(手足のしびれ)との関係を調査しました。
つまり、簡単に言うと、がん治療後の期間中にどんなものを食べると、症状が悪化して生活の質が低下するか?という研究です。
食事内容については、1週間にわたって、ファストフードを含む加工食品、肉(赤肉と加工肉)、アルコール、そして、加糖飲料(砂糖が入った飲み物)の摂取量を計算しました。
その結果、治療後にファストフードなどの加工食品と加糖飲料を多く摂取していた人では、期間中ずっと、より強い疲労感を感じていて、生活の質が低下していていました。
また、治療後にファストフードなどの加工食品と加工肉を多く摂取していた人では、抹消神経障害がひどくなっていました。
一方で、治療後にアルコールの摂取が増えると、疲労感が軽くなって生活の質が高くなる傾向にありました。
以上の結果から、がん治療後にファストフード、加工食品、加工肉および加糖飲料といった不健康な食べもの・飲み物をとることで、疲労感やしびれといった症状が悪化して、生活の質が低下するという結論です。
もちろん、人それぞれですので、この結果が当てはまらないこともあります。なかには、砂糖入りの飲み物を飲んだほうが、疲労感が軽くなる、という人もいるでしょう。
「好きなものを食べたい」という気持ちも大切ですし、尊重されるべきだと思います。
ただ、がんの治療後の生活が長期にわたる場合には、やはり日々の食事内容も重要になってきます。
がんサバイバーにおける食事の意味について、過去の動画「がん食事療法に意味はあるのか?がんサバイバーのための食事について最新ガイドライン」でお話した内容を簡単におさらいしたいと思います。
米国ガイドラインによるがん患者さんの食事の注意点:おすすめの食品と控えるべき食品
米国がん協会の新しいガイドラインによると、治療が一段落したサバイバーにとって、食事に気を遣う(健康的な食事をする)ことは意味があるといっています。
これは、どういった食べもの・飲みものが、がんサバイバーの症状、生活の質、そして、生存期間に影響するかについてのエビデンスに基づいた見解です。
では、どういった食べものを摂取すべきで、どういった食べものを控えるべきなのでしょうか?
がんサバイバーが摂取すべき食品
がんサバイバーがなるべく摂取すべき食べものです。
野菜、豆類、そして、果物です。次に、全粒穀物です(玄米や全粒粉のパン、パスタなどですね)。
がんサバイバーが控えるべき食品
反対に、控えるべき食べものとしては、赤肉(牛、豚肉)・加工肉(ベーコン、ソーセージ、ハムなどです)、加糖飲料(糖が入った飲み物のことで、具体的にはコーラやジュースですね)、超加工食品(定義はいろいろあるんですが、一般的には、レトルト食品、調理パン、カップ麺、スナック菓子など)です。
それから精製穀物です。白米や白いパンです。
全員に当てはまるわけではありませんが、ひとつの参考になると思います。
以上、治療後の食事によってがんの症状が悪化するというお話でした。
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