睡眠になんらかの問題があって熟睡できない人では、がんのリスクが高まることがわかっています。睡眠障害の症状・サインとして重要な「無呼吸」および「いびき」とがんとの関係についての研究を紹介します。
はじめに
皆さんは、しっかりと眠れていますか?
ご存じのように、がんの原因、あるいは、がんのリスクを高める因子には色々とあるのですが、そのなかに、睡眠の長さや質があります。
例えば、睡眠時間が短い人(6時間未満)だけでなく、長い人(たとえば9時間以上)でも、乳がんや大腸がんの発症リスクが高くなることがわかっています。
もう一つは、睡眠の質です。
つまり、睡眠になんらかの問題があって熟睡できない人では、がんのリスクが高まることがわかっています。
とくに、寝ている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸」があると、がん全体のリスクが高くなるという報告があります。
今回は、睡眠障害の症状・サインとして重要な「無呼吸」および「いびき」とがんとの関係についての研究を紹介します。
睡眠時無呼吸およびいびきと「がん」
まずは、睡眠時無呼吸とがんとの関係についての研究です。
2018年に Cancer Causes & Control という雑誌に報告された論文です。
この研究では、睡眠時無呼吸と診断された、およそ3万4千人について、追跡調査を行って、がんの発症率との関係を調べました。
その結果、睡眠時無呼吸がある人では、一般の人に比べて、がん全体のリスクが26%増えていたということです。
また、がんの部位別にみると、とくに増えていたのは、子宮体がん(2.8倍)、腎臓がん(2.2倍)、悪性黒色腫(1.7倍)、そして、乳がん(1.4倍)でした。
というわけで、睡眠時に無呼吸がある人は、がんのリスクが高くなるという研究結果です。
次に、いびきと癌との関係です。
2013年にSleepという雑誌に報告された論文です。
この研究では、アメリカの10万人以上の成人を対象として、睡眠時間および睡眠時のいびきの有無を調査しました。その後、22年間における大腸がんの発症率との関係を解析しました。
その結果、平均の睡眠時間が7時間の人に比べて、9時間以上の人で、かつ、いびきをかく人は、大腸がんのリスクが、男性では1.8倍、女性では2.3倍にも高くなっていました。
つまり、長時間睡眠でいびきをかく人は、大腸がんのリスクがおよそ2倍になるという結果です。
この他にも、6時間以下の短時間睡眠で、かつ、(ほぼ毎晩)いびきをかく女性は、乳がんの死亡リスクが2倍以上に上昇するという研究結果もあります。
睡眠障害と発がんの関係
では、なぜ、無呼吸などの睡眠障害があると、がんのリスクが増えるのでしょうか?
まだ、完全には解明されていませんが、ひとつのメカニズムとして、組織の低酸素が考えられています。
つまり、睡眠時の無呼吸によって全身の酸素濃度が低い状態となり、組織が酸欠に陥ります。
この酸欠状態(いわゆる低酸素)は、じつは、がんが発生したり、育つうえで有利な状態になることがわかっています。
もう一つは、睡眠障害によって、ホルモンのバランスが乱れることで、がんの成長を早めている可能性が指摘されています。
まとめ
以上、まとめますと、寝ている間に無呼吸の発作がおこる人や、いびきをかく人は、がんのリスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。
ただ、自分では寝ている間の無呼吸になかなか気付くことができないために、睡眠時無呼吸症候群かどうかは、専門の検査を受けないとわかりません。
大きないびきをかく人、パートナーや家族に「睡眠中に呼吸が止まっていた」と指摘されたことがある人、昼間に急に眠くなることがある人(居眠り運転をしそうになったり、大事な会議中にうとうとしてしまう)、十分な時間寝たはずなのに疲れが残っていると感じる人は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
いちど専門の医療機関(呼吸器内科)を受診して検査・治療を受けましょう。
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