高齢のがん患者さんには、がん以外の問題もでてきます。今回は、高齢がん患者さんでは骨折のリスクが2倍以上にもなるという研究結果を紹介し、その対策についてお話します。
はじめに
日本における急速な高齢化にともなって、高齢のがん患者さんが増えています。
2018年に罹患した65歳以上のがん患者さんの割合は75%に達しています。今や、がんと診断される人の4人に3人は高齢者なのです。
最近の治療の進歩によって、がんが治って(あるいは、がんと共存して)長生きできる高齢の患者さんが増えてきました。
ただ、高齢のがん患者さんには、がん以外の問題もでてきます。
せっかくがんがうまくコントロールされていても、他の健康上の問題で、生活の質がいちじるしく低下することがありますので、注意が必要です。
今回は、高齢のがん患者さんでは、リスクが2倍以上にもなる「ある疾患」についてのお話です。
がん患者と骨折
JAMA Oncology という雑誌の今月号(2022年11月号)に掲載された論文です。
アメリカの9万人以上の高齢者(平均年齢は70歳)を対象として、がんと診断された人と、がんのない人で、色々な部位の骨折のリスクを比較した大規模な集団研究です。
がんのない人に比べて、過去1年~5年未満の間に進行がんと診断されたがん患者さんでは、骨折のリスクが2倍以上だったということです。
高齢がん患者さんの骨折の部位としては、脊椎(約2.5倍)と骨盤部(約2.5倍)の骨折が多かったということです。
これは、最近よく言われる「フレイル」に関連した骨折で、尻餅をついたり、転倒に伴う圧迫骨折などのことです。
とくに、抗がん剤治療を受けた患者さんでは、抗がん剤治療を受けていない患者さんに比べて、骨折のリスクが高くなっていました。
また、タバコを吸っている患者さんでは、骨折のリスクが高くなっていました。
一方で、日常的に活動的な高齢がん患者さんでは、骨折は少ない傾向がみられました。
まとめ
以上の結果より、高齢がん患者さんでは、骨折のリスクが2倍になっていて、とくにフレイルに関連した骨折(椎骨や骨盤部)が多いという結果でした。
こういった部位の骨折では、治療によって、さらに活動性が低下することにつながります。なかには、寝たきりになってしまう患者さんもいらっしゃいます。
高齢がん患者の骨折対策
高齢のがん患者さんでは、骨折を防ぐために、まずは、ふだんの生活で転倒に注意すること。できるだけバリアフリーにしたりと、そういった工夫が必要です。
次に、運動をすることです。
ウオーキングでもいいですし、筋トレでもいいのですが、骨に刺激が加わる運動がいいようです。
また、加齢にともなって骨粗しょう症が増えますが、とくにがん患者さんでは、食事や運動、日光浴などで骨粗しょう症を予防することが必要になってきます。
以上、高齢のがん患者さんでは、骨折のリスクが2倍になるというお話でした。
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