「水道水に発がん性物質が検出された」という衝撃的なニュースが報道されました。今回は、原油(ガソリン)などに含まれるベンゼンとがん(白血病)との関係について解説します。
はじめに
「水道水に発がん性物質が検出された」という衝撃的な事実がわかりました。
ニュースによると、今年6月、北海道室蘭市で「異臭がする」という住民の通報を受け、市がガソリンスタンド前の配水管を調べたところ、水道水から基準値の760倍の発がん性物質「ベンゼン」が検出されたということです。
市が、周辺住民を対象に健康調査を実施したところ、4人がベンゼンを体内に取り込んだ可能性が高いことで、さらに、1人が「慢性骨髄性白血病」に罹患していたことも判明したということです。
発がん性物質ベンゼンとは?どんな「がん」が増える?
ベンゼンとは、原油に含まれる代表的な有機化合物で、染料、合成ゴム、合成洗剤等の製造時に使用されているということです。
また、環境中に広く存在しており、自動車の排気、石炭や石油の燃焼で空気中にも排泄されていて、呼吸によって摂取されています。
今回の事件でも、水道水に含まれるベンゼンだけでなく、汚染土壌から気化したベンゼンを住民が吸っていた可能性が指摘されています。
国際がん研究機関(IARC) は、ベンゼンを、カドミウム、アスベスト、ダイオキシンなど代表的な発がん性物質と同類の、グループ1(発がん性がある)に分類しています。
ベンゼンの発がん性については、ラットおよびマウスの経口投与実験において、血液毒性が強く、様々ながんの発生率増加が見られたこと、また、人において、工場でベンゼンに暴露された労働者に、がんが増加していたという報告や、自動車の出す排気ガス中のベンゼンによって、小児の白血病が増えるという研究データもあります。
ベンゼンに曝露されると、どんながんになるのか、ということですが、多くの研究によって、ベンゼンが白血病、主に急性骨髄性白血病を引き起こすということがわかっています。
白血病の発症リスクを高める因子としては、喫煙がありますが、ベンゼンやトルエンなど化学物質に曝露されることによってもリスクが高くなります。
ベンゼンの基準値は?
ちなみに、ベンゼンの基準値は、地下水基準で 0.01 mg/Lとなっています。
ところが今回のニュースでは、水道水のベンゼン濃度は760倍にもなっていたそうです。
ベンゼンに関しては、過去にフルーツジュースなどのソフトドリンクに含まれていることが問題になりました。
また、昨年、多くの日焼け止めにもベンゼンが含まれていることが話題となっています。
また、今回と同じような事件は、中国でもおこっていて、2014年に水道水から基準値の20倍の高濃度のベンゼンが検出されたというニュースがありました。
このように住民が、ペットボトルの水を買い占めている写真が報道されています。
これも、原油が老朽化した水道管に混入したことが原因だったそうですから、どこででも起こる可能性がある環境汚染だと考えられます。
今回の北海道の事件は、ガソリンスタンドからガソリンが土壌に漏れ出し、ベンゼンが水道水に混入したということですが、ガソリンスタンドに限らず、石油や化学薬品を扱う工場の近くでは、同じようなことが起こる可能性もあるわけです。
こういった事件がおこると、安心して水道水を飲めなくなります。
今回の事件では、市の対応の悪さが問題視されていますが、なぜこういったことが起こったのかを徹底的に追求すべきですし、今後、同じようなことが起こらないように対策をしてほしいと思います。
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