いちばん長生きする運動は?がんなどの死亡率を減らすために最も有効な運動は何か、という研究結果が報告されました。
はじめに
みなさんは、どんな運動をしていますか?
ジョギングやウォーキング、あるいは、テニス、水泳、サイクリングなどもありますね。
最近は暑いので、スポーツジムや部屋のなかで運動をされている方もいるでしょう。
私の場合は、週末のウォーキングと平日の筋トレですが、最近は暑すぎてサボりがちです。
運動をすることで、がんを含めた病気のリスクが減って、健康寿命を延ばせることがわかっています。
ただ、運動といっても、色々な種類があるため、「長生きのためにはどの運動が最もいいのか」についてはよくわかっていませんでした。
今回、がんなどの死亡率を減らすために有効な運動は何か?という研究結果が報告されましたので、紹介します。
がん死亡率をもっとも低下させる運動は?
今年の8月に、JAMA Network Open という雑誌に報告された論文です。
アメリカの国民規模の健康データベースに登録されている27万人以上の高齢者(59歳~82歳、平均年齢が0歳)を対象として、やっている運動の種類と、すべての死因による死亡率、心血管病による死亡率、および、がんによる死亡率との関係を調べた研究です。
アンケートで、どんな運動を週に何時間やっているかを調査しました。
そして、10年以上にわたって追跡し、がんや心血管病などによる死亡を確認しました。
ちなみに、それぞれの運動の強さが違いますので、時間ではなく、おなじ運動強度(1週間のメッツ・時間)で比較しました。
ちなみに、メッツとは運動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通の歩行が3メッツに相当します。
結果ですが、まず、すべての運動を含めた解析では、予想通り、週に7.5~15メッツ以上の運動をすることで、すべての死因による死亡リスクが低下していました。
がんによる死亡リスクに関しては、心血管病による死亡リスクに対する減少効果よりも少ないのですが、同じ傾向がありました。
では、どの運動がもっとも死亡リスクが低くなっていた(つまり、長生きしていた)のでしょうか?
すべての死因による死亡リスクが減っていた運動のなかでも、効果が高いトップ3を紹介します。
第3位:ウォーキング
まず3位は、ウォーキングで、死亡リスクが9%減っていました (HR, 0.91; 95% CI, 0.89-0.93)。
第2位:ランニング
第2位は、ランニングで、15%の低下でした(HR, 0.85; 95% CI, 0.78-0.92)。
第1位:ラケットスポーツ
そして第1位は、なんとラケットスポーツ(テニスやバドミントンなどのことですね)で、16%の低下でした(HR, 0.84; 95% CI, 0.75-0.93)。
ひとりでは出来ないスポーツですが、仲間と楽しく汗をかくことで、運動としての効果だけでなく、ストレス解消やリラックス効果があるのかもしれませんね。
4位以下
ちなみに、それ以下のランキングですが、4位からは、他の有酸素運動(7%減)、ゴルフ(7%減)、水泳(5%減)、サイクリング(3%減)の順になっていました。
というわけで、長生きする運動の1位は、ラケットスポーツという結果でした。ちょっと意外ですね。
運動量と死亡率
ちなみに、運動の量との関係では、どのスポーツに関しても、中等度の運動強度(週に7.5~15メッツ)付近が最も死亡リスクが低下していて、それ以上運動する人では、逆に死亡率が低下する効果が失われるということでした。
例えば、水泳の場合ですが、もっとも少ない運動量のグループが、もっとも死亡リスクが低下しており、運動量が多いグループではむしろリスクが高くなる傾向にありました。
つまり、ほどほどがベストで、やりすぎもよくないということがわかります。
目安としては、30分間のウォーキングを週に3回すると、だいたい10メッツ・時になります。
以上、長生きする運動トップ3というお話でした。
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