帯状疱疹も「がん」も、原因のひとつとして、「免疫機能の低下」があります。では、帯状疱疹になった後のがんのリスクはどうなのでしょうか?今回は、帯状疱疹にかかった後のがん発症リスクについての研究結果を紹介します。
はじめに
帯状疱疹とは、ご存じのようにウイルスによる皮膚の痛みやブツブツが特徴の病気です。
かかった人もいらっしゃると思いますが、神経の痛みが長引くこともあって、結構、大変な病気です。
原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスが感染した後に、神経に潜んでいて、免疫機能の低下や疲れ、ストレスなどがきっかけで、ふたたび活性化することでおこります。
帯状疱疹は、がんなどの免疫機能が低下する病気が原因になることがあるといわれていて、実際に、がん患者さん(とくに白血病など血液のがん)は帯状疱疹ができやすいことが報告されています。
では、帯状疱疹ができた人では、がんになるリスクはどうなるのでしょうか?がんのリスクが高くなるのでしょうか?変わらないのでしょうか?
というわけで今回は、帯状疱疹になった後の、がんのリスクについての報告結果を紹介します。
帯状疱疹とがんとの関係
2013年に、Br J Cancer という雑誌に報告された論文です。
タイトルは、「帯状疱疹感染後のがん発症リスクについて:1次医療データベース解析」というものです。
イギリスの医療データベースを使った研究で、過去にがんになったことがない人のうち、帯状疱疹にかかった患者さん(およそ1万3千人)と、年齢などの背景を一致させた帯状疱疹にかかったことがない人(およそ6万人)のグループを対象として、最長5年間にわたって、がんのリスクを比較しました。
その結果、帯状疱疹にかかった人では、かかったことがない人に比べて、すべての種類のがんの発症リスクが2.4倍になっていました。
とくに、若い人でリスクが高くなるということで、18歳から50歳までの人では、がんのリスクが6.6倍にも高くなるということでした。
がんの種類別には、リスクの高くなるがんとしては、卵巣がん(5.4倍)、結合組織の悪性腫瘍(4.5倍)、脳や中枢神経のがん(4倍)、食道がん(3.4倍)、口腔・咽頭がん(3.1倍)、血液のがん(3倍)などでした。
また、帯状疱疹の感染からがん診断までの期間は、中央値で 815日(≓2年3ヶ月)でした。
つまり、けっこう時間がたってからがんが見つかっているということでした。
以上の結果より、帯状疱疹になった人は、その後、がんのリスクが高くなるという結果でした。とくに若い人では6倍以上になるということです。
また、平均で2年くらいたってからがんを発症しているということですので、帯状疱疹がその後のがん発症の「前兆」になると考えられます。
まとめ
帯状疱疹にかかった人は、とくに50歳以下の若い人の場合、その後がんを発症するリスクが高くなるということを知っておいて、がん検診を受けるなり、もし気になる症状がある場合は、できるだけ早く病院を受診することをおすすめします。
というわけで、今回は帯状疱疹になった後の、がんのリスクについてのお話でした。
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