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【注意喚起】新型コロナワクチン接種で「がん」全身転移の真実とは?PET(ペット)検査の偽陽性の可能性

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コロナワクチンの接種後に、がんの全身リンパ節への転移が疑われた症例の報告が増えています。これは、PET検査の偽陽性(本当はがん転移ではないのに陽性だと判定されること)が原因とのことです。「ワクチン接種後にがんが全身転移する」という情報の背景には、こういった検査の偽陽性による誤診が関係している可能性があります。

はじめに

前回の動画で、新型コロナウイルスのワクチン接種後に、がんが自然退縮したという症例を紹介したところ、大変な反響がありました。

もちろん、この症例報告だけを根拠に「コロナワクチンでがんが治る」というつもりはありませんが、ひとつの情報として、こういう症例もあるということをお伝えしたくて動画をつくりました。

新型コロナワクチンとがんとの関係については、あきらかなデマや、うわさレベルのものも含めて様々な情報が流れていて、根拠がないにもかかわらず、それを信じてしまう人もたくさんいるようです。

たとえば、SNSでは、「コロナワクチン接種後にがんが急速に進行して多発転移する」、といった情報もあって、気になっているがん患者さんもいると思います。

私も医療者として「ワクチンでがんが進行」という情報は気になりますので、そういう症例や観察研究が医学雑誌に発表されていないか常にチェックしていますが、少なくとも現時点では、そういった報告はないようです。

ただ、いくつか気になる論文を発見しました。

それは、コロナワクチンの接種後に、がんの全身リンパ節への転移が疑われたケースがあった、という報告です。

これは結論からいうと、検査による偽陽性、つまり本当にがんが転移していたのではなく、ワクチンに反応して一時的にリンパ節が腫れて、あたかも転移のようにみえた、ということです。

こういったワクチンによるリンパ節の反応を、がんの転移と勘違いする可能性もあると思ったので、注意喚起もかねて解説したいと思います。

今回は、コロナワクチン接種後に、がんリンパ節転移が疑われた症例について、最新の医学論文を紹介します。

コロナワクチン接種後にがんリンパ節転移が疑われた症例

乳がんの症例

まずは乳がんの症例で、昨年2021年に、Current Problems in Cancer という雑誌に報告された論文です。

症例は、48歳の女性で、左乳がん(ステージ1)に対して、2011年に手術(乳房切除とセンチネルリンパ節生検)を受けました。

その後、再発予防のためにホルモン療法を続けていましたが、その6年後に、骨および肝臓へ多発転移がみられたため、抗がん剤治療が開始されたということです。

幸いにも治療がよく効いて、転移が縮小しました。その後、PETで定期的に経過観察をしていましたが、しばらく再発はありませんでした。

ところが、2021年の1月におこなったPETで、左の腋窩(わき)、胸の筋肉の下のリンパ節の数やサイズが増加しており、FDGの集積もみられました。つまり、がんのリンパ節への再発が疑われる所見でした。

そこで、11日後に生検(組織でがんを確認する検査)を行おうとして超音波検査でリンパ節を確認すると、リンパ節は平ぺったい正常のかたちをしており、がんの転移ではないと判断しました。

あらためて患者さんによく話を聞くと、このPET検査の1週間まえに、左腕にモデルナ製のコロナワクチンを接種したことが判明しました。

したがって、このワクチンによるリンパ節の反応性の腫れが、PET検査の偽陽性につながったと結論づけています。

同じように、乳がんの患者さんで、ワクチン接種後にわきのリンパ節が腫れて転移が疑われたものの、組織の検査でがんではなかった症例が、日本の施設からも数例報告されています。

前立腺がんの症例

次に、前立腺がんの症例です。

今年(2022年)の6月に、Radiology Case Reports という雑誌に報告された論文です。
62歳の男性で、リンパ節および骨への転移をともなう前立腺がんと診断された患者さんです。

まずホルモン療法と放射線治療を行い、2年間、再発所見はありませんでした。

ところが、定期検査で受けたPETで、左のわき、気管支のそば、大動脈のまわり、そして、肺門部(肺の入り口のところ)など、全身のリンパ節が大きくなっており、また取り込みが亢進していました。

ただ、患者さんはこのPET検査の3週間ほど前に、ファイザー製のコロナワクチンを接種していたとのことで、治療はせずに経過をみました。

そして、14週間後に、ふたたびPET検査を行ったところ、前回転移をうたがったすべてのリンパ節は小さくなって、取り込みも減っていました。

したがって、この患者さんも、コロナワクチンによるPETの偽陽性と判断されました。

ワクチン接種後のPET検査による腋窩リンパ節の所見

最後に、コロナワクチン接種後のFDG-PETの所見について、多くのがん患者さんを対象として調査した研究を紹介します。

今年(2022年)の1月に、Eur Radiol という雑誌に報告された論文です。

モデルナあるいはファイザー社製のコロナワクチン接種後にPETをとった140人のがん患者さんについて、所見をまとめました。

がんの種類は、メラノーマ(皮膚がん)、肺がん、リンパ腫、頭頸部がんなど様々な部位のがんでした。

コロナワクチン接種後、平均で17日後にPET検査を受けていました。

結果ですが、全体の患者さんの54%で、接種した側のわきのリンパ節へのFDGの取り込み亢進(つまり、陽性を疑う所見)がみられました

またワクチンの種類別で比較したところ、 モデルナが72%、ファイザーが43%と、モデルナのほうが陽性を疑う所見が多いことがわかりました。

以上の結果より、コロナワクチン接種後に、接種した腕側のわきのリンパ節が反応性に腫れて、PETで陽性を疑う所見がでることは、よくあることであると結論づけています。

患者さんが検査前にワクチン接種を受けたことを医師が知らなかった場合、このPETの偽陽性によって、不必要な検査や治療へとつながる可能性もあります

したがって、PET検査を計画する際は、患者さんにワクチンの接種歴や接種部位などをくわしく聴取する必要があることを強調しています。

まとめ

以上、コロナワクチン接種後に、わきのリンパ節や全身のリンパ節が腫れてPETで転移を疑う所見がみられることが少なからずあるため、注意が必要という報告でした。

患者さんによって違いますが、リンパ節の腫れは6ヶ月以上続くこともあるようです。

「ワクチン接種後に急にがんが進行した」と勘違いする症例のなかには、こういったPETの偽陽性の可能性もあると考えられます。

 

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外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。
  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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