「たまごを食べすぎるとがんが増えるのか?」卵には、豊富なタンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルなどの体に必要な栄養素が豊富に含まれていて、「完全栄養食品」とも呼ばれています。一方で、食べすぎると、コレステロール値が上昇し、心臓や血管の病気が増えるという報告があります。では、がんはどうでしょうか?
はじめに
卵には、豊富なタンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルなどの体に必要な栄養素が豊富に含まれていて、「完全栄養食品」とも呼ばれています。
卵かけご飯もおいしいですし、卵焼き、茶碗蒸し、オムレツ、など調理のレパートリーも多いので、料理の材料として万能で欠かせない存在ですね。
一方で、卵の黄身にはコレステロールが多く含まれていることから、食べすぎると高脂血症や心臓・血管の病気を増やす可能性が指摘されています。
とくに、卵を多く摂取する人では、血液中のLDLコレステロールが高くなることが報告されています。
コレステロールは、体に必要な栄養素である一方で、がん細胞の増殖を促進することが報告されています。では、実際に卵とがんの関係についてはどうなのでしょうか?
今回は、卵の摂取とがんとの関係について研究論文を調べてみました。
今回の動画の内容です。
1.卵とがんの関係:アメリカでの研究
2.世界中の研究まとめ
3.日本人での研究
以上3つについて、お話します。
卵の摂取量とがんとの関係
まずは、海外からのデータになりますが、アメリカでの集団研究を紹介します。
2021年に PLoS Med という雑誌に報告された論文です。
52万人以上のアメリカ人を対象として、食事のくわしい調査を行って、その後、平均で16年間の期間中におけるがんを含めた病気による死亡リスクについて解析しました。
その結果、卵の摂取量の増加は、すべての死因、心血管病、そして、がんによる死亡リスクの増加と有意に相関していました。
具体的には、1日に卵半分の摂取が増える毎に、がん死亡リスクが7%増加していたとのことです。
この卵を、他のタンパク源である、卵白、鶏肉、魚、あるいは、乳製品などに置き換えた場合には、がんも含めて死亡リスクが減るという計算です。
次に、過去の世界中の研究をまとめた解析です。
今年の4月に、Advances in Nutritionという雑誌に報告された論文です。
過去に報告された卵と死亡リスクについての33件の集団研究(対象者が220万人以上)をまとめて総合的に解析した、メタアナリシスという研究です。
卵をもっとも多く摂取するグループでは、最も少ないグループに比べて、全ての死因による死亡リスク、心血管病、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患による死亡リスクに有意な差はありませんでした。
ところが、がんによる死亡リスクだけは、20%高くなっていました。
また、卵の摂取量が増えるほど、がん死亡のリスクが高くなっており、卵1個増えるごとに、リスクが4%高くなっていました。
ただし、これは、世界中の様々な人種での研究を集めたデータですので、日本人に当てはまらない可能性があります。
日本人ではどうなのでしょうか?
2017年に、Eur J Clin Nutr という雑誌に、日本人を対象とした研究が報告されていました。
この研究では、30歳以上の4686人の日本人女性を対象として、卵の摂取量とがんによる死亡リスクとの関係を15年間にわたって調査しました。
その結果、1日に1個卵を食べるグループに比べて、1日に2個以上食べるグループでは、すべての死因による死亡リスクがおよそ2倍、そして、がんによる死亡リスクは3.2倍にも高くなっていました。
まとめ
というわけで、以上の研究からは、卵の摂取量が増えると、がんによる死亡リスクが高くなる可能性があります。
卵はとてもよいタンパク源ですので、栄養学的なメリットも大きいと思います。
ただ、食べすぎると、がんや心血管病の危険が高まりますので、1日に1個以内にとどめることをオススメします。
ひとつの食品をたくさん食べるのではなく、バランス良く色々な食品をとるように心がけましょう。
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