がん患者さんは「4つ足の動物の肉は制限したほうがいい」という食事療法がありますが、根拠はあるのでしょうか?また、加工肉や赤肉(牛や豚)の過剰摂取には発がん性があると報告されていますが、がん診断後にはお肉は控えたほうがいいのでしょうか?大腸がん患者を対象とした最新の研究結果を紹介します。
はじめに
がんの食事療法の本などで、がん患者さんは「4つ足の動物の肉は食べない、あるいは、控えたほうがいい」ということが書かれているものがあります。
これは、牛や豚など四つ足の動物の肉を避けるということですが、はたして根拠はあるのでしょうか?
また、海外での研究では、赤肉(牛、豚、羊などの加工されていない肉)を多く摂取すると、がんの発症リスクが30%も上昇するという結果が報告されていますし、ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉を多く摂取すると、大腸がんなどのリスクが20%高くなるとのことです。
実際に、WHOのがんに特化した研究機関であるIARC(国際がん研究機関)は、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」、赤肉を「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と分類しています。
ですから、がんの予防の観点からは、加工肉や赤肉は、控えめにしたほうがいいと言われています。
では、がん患者さんは、診断後の食事で、肉を食べると再発のリスクが増えたり、死亡率が上昇するのでしょうか?
今回、大腸がん患者さんを対象として、肉の摂取と死亡率との関係を調査した研究結果がでましたので紹介します。
大腸がん診断後の赤肉・加工肉の摂取量と再発・死亡率との関係
JAMA Network Openジャーナルに今年の2月に報告されたばかりの論文です。
ステージ3の大腸がん1011人について、がん診断後の食事について詳しく調査し、赤肉および加工肉の摂取量と、大腸がんの再発・死亡との関係を解析しました。
例えば、赤肉の摂取がもっとも少ないグループ(週に平均で1.5サービング)ともっとも多いグループ(週に7サービング)で、観察期間中の再発または死亡率を比較しました。
その結果、赤肉、加工肉のどちらの摂取も、大腸がんの再発や死亡リスクとの関連を認めませんでした。
つまり、がんの診断後に赤肉や加工肉をたくさん食べても、再発や死亡リスクが上昇することはなかったという結果です。
がん患者さんは肉を控える必要はない
ちなみに、赤肉は、アミノ酸スコアも高く、がん患者さんに必要なタンパク質をとるためにはとても良い食品です。
ですから、私個人の意見としては、積極的にとってほしいと考えています。
ただし、なんでもそうですが、過剰に食べることはおすすめしません。
というのも、別の大腸がん患者の研究では、肉、脂肪、精製された穀物、それからデザートを多くとる西洋スタイルの食事(西洋食)を多くとっている患者さんは、手術後のがん再発および死亡リスクが高いことが明らかとなっています。
日本人は、諸外国に比べて、赤肉の摂取量は多くありませんので、そんなに気にすることはないと思いますが、あまり偏らないようにしましょう。
例えば、お肉の次の日は魚にしたり、鶏肉にしたりと、バランス良く食べるようにするといいですね。
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