乳酸菌飲料などのプロバイオティクスには腸内環境を整える作用があります。腸内環境の乱れはがんの原因になりますが、「ヤクルト1000」にはがんの予防に効果あるのでしょうか?過去の研究論文を調べてみました。
はじめに
話題の「ヤクルト1000」ですが、品切れ続出で、なかなか手に入らない状態が続いているそうです。
今現在も、ヤクルトのホームページからは購入できないようですし、アマゾンなどのネットでは、すごく高い値段で販売されています
この「ヤクルト1000」は、機能性表示食品で、1,000億個というヤクルト史上最高密度の乳酸菌シロタ株が含まれているそうです。
この機能性表示食品とは、「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品」ということです。つまり、実験や人での研究で、何らかの健康に対する機能が認められた食品であるということです。
ヤクルトのホームページによると、ヤクルト1000に含まれる乳酸期シロタ株を継続して飲むことで、1.ストレスが緩和される、2.睡眠の質が高まること、そして、3.腸内環境が改善する、という3つの機能が期待できるということを謳っています。
がんの原因として、過度のストレス、睡眠障害、そして、腸内環境の乱れがありますので、理論的には、ヤクルト1000を飲み続けると、がん予防につながるのではないかと期待されます。
ただし、ヤクルト1000は、あくまで「食品」であって、医薬品や医薬部外品ではありませんので、がんなど病気の予防効果を謳ってはいません。
では、はたして、ヤクルト1000でがん予防効果が期待できるのでしょうか?研究を調査してみました。
ヤクルト1000(乳酸菌シロタ株)でがん予防効果が期待できる?
もちろん、ヤクルト1000という商品を長期にわたって飲んだ人のがんの発症リスクを調べた研究はありませんでしたが、一報、ヤクルト1000に含まれる乳酸菌シロタ株を長期にわたって摂取するグループにおけるがんのリスクについての観察研究がありましたので、紹介します。
2020年に、Nutrients という雑誌に報告された論文です。
この研究では、まず最初に、食物繊維(ふすまビスケット)と乳酸菌シロタ株のサプリメント(1日3g、300億個)によって大腸の腫瘍が予防できるかを調査したランダム化比較試験に参加した380人のうち、同意が得られた237人を、その後長期にわたって乳酸菌サプリを続けるグループと続けないグループに分けました。
そして、最初の試験から平均20年間以上経ってから、がんを含めた健康状態を比較した観察研究です。
その結果、累積のがんの罹患率は、乳酸菌のサプリを続けていたグループでは18.8%で、サプリを続けていなかったグループでは22%だったということで、有意差はありませんでした。
というわけで、少人数での検討ですが、乳酸菌シロタ株を長年摂取することによって、明らかながんの予防効果はみられなかったという結果です。
ただ、他の観察項目では、乳酸菌サプリを続けていたグループでは、体重の減少が少なかったということです。
高齢者では、体重の減少が問題になりますが、乳酸菌シロタ株で体重を維持できる可能性があるということです。
まとめ
以上、乳酸菌シロタ株の長期摂取によって、がんの罹患リスクが減るというエビデンスはありません。
ただ、個人的には、がんになるリスクは変わらないとしても、もし、がんになったときに、腸内環境がいい状態にあると、治療成績が良くなることがわかっていますので、ヤクルトに限らずプロバイオティクスを日常的に摂取することは、おすすめです。
#ヤクルト1000 #乳酸菌シロタ株 #がん予防 #腸内細菌 #ストレス #睡眠の質 #乳酸菌飲料 #プロバイオティクス
最新記事 by 佐藤 典宏 (全て見る)
- 余命(予後)と関係する「がん再発」4つのパターン - 2023年1月23日
- 【がん薬物療法】分子標的薬 アダグラシブ:転移を認めるステージ4「大腸がん(KRAS G12C)」に奏効率46% - 2023年1月21日
- 便秘がちな人に増える意外な「がん」とは?慢性の便秘でリスクが増えるのは大腸がんではなく・・・ - 2023年1月19日