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緊急入院で発見される「がん」の特徴:1位の癌は? 最新の国際研究を紹介

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緊急で発見されることが最も多い「がん」は?緊急入院で発見されるがんの特徴について、最新の研究結果を紹介します。

はじめに

がんが発見されるきっかけ、いきさつには色々な場合があります。

たとえば、検診で異常を指摘されて病院で精密検査を受けたらがんが発見されるケースや、急に症状がでて緊急入院したら、その原因ががんだったというケースもあります。

このうち、できれば避けたいのが、緊急入院でがんが見つかることです。

緊急入院でがんが見つかることは、印象としては「少なくない」と感じますが、では実際にがんの診断全体ではどのくらいの割合なのか、また、どういったがんが緊急で診断されることが多いのか、についてはよくわかっていません。

今回は、緊急入院で発見されるがんの特徴について、最新の研究結果を紹介します。

緊急入院で発見されるがんの種類

今年の5月に、Lancet Oncology という雑誌に報告された論文で、タイトルは、緊急入院後30日以内に診断された「がん」の危険因子と予後との関係:国際的がんベンチマークパートナーシップにおける住民ベースの研究、というものです。

この研究では、6つの国の14の地域から、8種類のがん、トータルで約85万7千人についてのデータベースを集めて、各地域におけるがん診断の状況や生存率などを比較するという研究です。

6つの国は、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ニュージーランド、ノルウェイ、そして英国です。

日本と医療体制や健康保険の制度は違いますが、おおむね医療のレベルとしては同等と考えていいと思います。

8つのがんは、食道がん、胃がん、結腸がん、直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、そして、卵巣がんです。

緊急入院から30日以内にがんが診断された場合に、「がんの緊急診断」と定義しました。

つまり、急に症状がでたり、あるいは、症状が徐々に悪化して我慢できなくなって緊急入院となって、入院中の検査でがんが判明したというケースです。

結果ですが、まず8つのがん全体における緊急診断の割合は、地域によって差がありますが、24%~43%でした。

およそ4分の1以上の患者さんで、がんが緊急入院後に判明しているということで、かなり多くの患者さんが緊急に診断されていることがわかります。

次に、どんな種類のがんが、緊急に診断されることが多いのか、についてです。

もっとも緊急入院後30日以内に診断されることが多いのが、膵臓がんで、患者さんの46%が緊急入院によってがんが発見されていました

次に多いのが肝臓がんで、42%、3番目に多いのが卵巣がんで、35%でした。

というわけで、緊急入院で発見される割合が最も多いがんは、膵臓がんということでした。

症状については詳しい記載はありませんでしたが、おそらく、膵臓がんの進行による黄疸やはげしい腹痛などが原因で緊急入院が必要になったのだと考えられます。

これらのがんは、検診など早期に発見される機会が少ないために、入院が必要となる症状がでてから診断されることが多いのではないかと予想されます。

緊急入院で発見されたがんの特徴

そして、緊急入院で発見されたがんの特徴についてです。

まずは、高齢者に多いということで、緊急診断の割合は、85歳以上の患者さんのグループで最大になっていました。

また緊急診断されるがんは、ステージが高くなるにつれて増えていました

つまり、進行したがんでは、多くが緊急入院がきっかけで診断されるということです。

さらに、緊急で診断されたがんは予後(治療経過)が悪くなっており、診断されてから12ヶ月以内に死亡するリスクがおよそ2倍にもなっていました。

まとめ

以上の結果より、国際的にみても、「緊急入院がきっかけで発見されるがん」は少なからず存在すること、また、がんの種類別には「膵臓がん」で最も多く、高齢者に多く、より進行したがんで多くなることが特徴でした

また、緊急でみつかったがんの予後は不良で、早期に死亡するリスクが2倍に高まるという結果でした。

こういった緊急で診断されるがんの特徴を知っておくことも重要で、がんの死亡率を減らすためには、より早期に発見・治療できるように何らかの対策を立てるべきであるという意見もあります。

というわけで、緊急入院で発見される「がん」の特徴というお話でした。

 

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外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。
  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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