野菜のなかでも、とくにがん予防に効果的なものがあります。今回は、玉ねぎやにんにくなどのアリウム属の野菜と胃がんの発症リスクについての研究を紹介します。
はじめに
野菜をたくさん食べる人は、がんのリスクが低下するという話は聞いたことがあると思います。
野菜のなかでも、とくにがん予防に効果的なものがあります。
ひとつは、ブロッコリーやキャベツ、カリフラワーなどのアブラナ科の野菜です。
もう一つは、今回紹介するアリウム属の野菜です。
「アリウム属」という言葉、聞いたことがない人も多いのではないでしょうか。
アリウム(allium)とはユリ科アリウム(ネギ)属の植物を総称したもので、代表的な野菜には、にんにく、玉ねぎ、ニラ、ネギ、エシャロットなどがあります。
ツーンとくる刺激のある成分が含まれていて、匂いが強い野菜ですね。
このアリウム属の野菜には、がんを抑制する成分が含まれていて、とくに、にんにくと玉ねぎは、がんのリスクを下げる野菜として有名です。
がん予防のためのアリウム属の野菜
にんにく
まず、にんにくです。
にんにくには「二硫化アリル」という成分が含まれており、抗酸化作用や抗炎症作用を介してがんの発生を抑えると考えられています。
にんにくは、アメリカのデザイナーフーズという、がん予防効果がある食品のなかでも頂点に位置しています。
2019年にBMJ(ブリティッシュメディカルジャーナル)に報告されたランダム化比較試験では、にんにくのサプリメントによって胃がんによる死亡リスクが34%低下したとのことです。
タマネギ
それから、玉ねぎですね。
玉ねぎには、硫化アリル、ケルセチンといった、抗酸化作用をもった成分が含まれています。
なかでもケルセチンには強力ながん抑制作用があって、細胞や動物実験では、がんの成長や転移を阻止することがわかっています。
アリウム属の野菜の摂取と胃がんリスク
今回は、このアリウム属の野菜によって、胃がんのリスクがどのくらい低下するのか?を調査した最新の研究を紹介します。
2022年2月に、Br J Cancer という雑誌に報告された論文です。
これまでに世界中で行われた胃がんの疫学研究(ケースコントロール研究)のうち、食べものについての詳細な情報が含まれている17件の研究をまとめて解析した研究です。
全部で、6,097人の胃がん症例と、13,017人の健康なコントロールの集団での比較を行いました。
アリウム属の野菜は、玉ねぎ、にんにく、ねぎ、セイヨウネギ、エシャロットなどと定義しました。
これらの野菜の摂取量と、胃がんの発症リスクとの関係を解析しました。
その結果、アリウム属の野菜全般を、もっとも多く摂取するグループでは、もっとも少ないグループに比べて、胃がんの発症リスクが29%(およそ3割)低下していました。
さらに、アリウム属の野菜をたくさん食べれば食べるほど、胃がんのリスクが低下するという結果です。
野菜別の解析では、玉ねぎをもっとも多く摂取するグループでは、もっとも少ないグループに比べて、胃がんの発症リスクが31%低下していました。
こちらも同様に、たくさん食べれば食べるほど、胃がんのリスクが低下するという結果です。
にんにくについては、もっとも多く摂取するグループでは、もっとも少ないグループに比べて、胃がんの発症リスクが17%低下していました。
にんにくに関しては、胃がんのリスク低下は、玉ねぎほどはないようです。
とくに重要な結果として、これらのアリウム属野菜による胃がんのリスク低下は、ヨーロッパ人やアメリカ人では認められなかったのに対して、アジア人ではリスクは50%も減っていたとのことで、大きな差があったということです。
さらに、他の研究では、アリウム属野菜を多く摂取する人では、大腸がんや乳がんのリスクが低くなるという結果です。
まとめ
以上の結果から、アリウム属の野菜(とくに、玉ねぎとにんにく)は、胃がんをはじめ、様々ながんの予防に有効であり、とくにアジア人では、期待できるということです。
われわれ日本人にとっては、うれしい結果です。
がんを撃退するために、玉ねぎ、にんにく、ニラ、ネギなどのアリウム属の野菜を食べましょう!
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