がん患者さんにとってのサプリメントの効果・必要性については議論がわかれるところですが、一部のサプリメントには、生存率を改善する効果も認められています。今回は、がん診断後のサプリメントが生存率（全死亡率、がん死亡率、再発率）におよぼす影響について最新のメタアナリシスの研究結果を紹介します。
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はじめに
がんと診断された患者さんの多くは、サプリメントに興味を持ったり、実際に飲み始めることがあると思います。
主治医にサプリメントについて相談された患者さんもいると思いますが、多くの医師は、「がんに効くサプリメントなんかありませんよ！」の一点張りで、あまり自分で研究論文を調査しようとはしません。
がん患者さんにとってのサプリメントの必要性については、議論がわかれるところですが、私は、運動や食事などのセルフケアのひとつとして、サプリメントを取り入れることは別に悪いことではないと思います。
がん患者さんがサプリメントをとるメリットには、
- 体力の低下や栄養状態の悪化を防ぐ
- 免疫状態を改善
- 抗がん剤の副作用を軽減
- がん治療の効果を高める可能性
- 精神的にポジティブになれる（自分でできるセルフケアのひとつ）
などがあると思います。
実際に、一部のサプリメントには、がん患者さんの生存率の上昇（死亡リスクの低下）と関連が認められたものもあります。
今回は、がん診断後のサプリメントが生存率におよぼす影響について最新のデータを紹介します。
がん診断後のサプリメントと生存率との関係（メタアナリシス）
今年の3月にNutrition and Cancerという雑誌に報告された論文で、タイトルは「がん診断後のサプリメントの摂取と全死亡、がん死亡および再発との関係：システマチックレビューとメタ解析」です。
この研究では、2019年の4月までに報告された、がん診断後のサプリメント摂取と生存率に関する複数の研究（観察研究とランダム化比較試験）を集めて、メタ解析という手法で、様々な種類のサプリメントとがん患者さんの全ての死因による死亡率、がんによる死亡率、および、再発率との関係を調査しました。
その結果、いくつかのサプリメントは、がん患者さんの生存率の改善と相関することが分かりました。
カルシウム
まず、カルシウムの摂取によって、がん患者さんの全ての死因による死亡リスク（全死亡リスク）が12％低下、がんによる死亡リスクが29％低下、とくに、大腸がんによる死亡リスクが34％も低下していました。
ビタミンＤ
次に、ビタミンＤの摂取により、がん患者さんの全死亡リスクが14％低下していました。
乳がん患者における検討
また、乳がん患者における検討では、
ビタミンＣの摂取によって、乳がん患者の全死亡リスクが21％低下
ビタミンＤの摂取によって、乳がん患者の全死亡リスクが15％低下
ビタミンＥの摂取によって、乳がん患者の全死亡リスクが14％低下していました。
また、乳がんの再発に関しても、
マルチビタミンの摂取によって、再発リスクが21％低下
ビタミンＣの摂取によって、再発リスクが24％低下
ビタミンＥの摂取によって、再発リスクが31％低下していました。
以上より、カルシウムやビタミンのサプリメントによって、がん患者さん全体の生存率や一部のがんの死亡や再発リスクが低下することが示されました。
ただ、サプリメントの量や、摂取する期間などの詳細については、この研究ではわかっていません。
また、この複数の論文を総合評価するメタ解析も万全ではないことと、これらの解析は、おもに観察研究の結果に基づいていることより、この結果が100％正しいとは限りません。
今後、より多くのランダム化比較試験によって検証されるべきである、としています（実際にはこのようなランダム化比較試験は実施することが難しいのですが）。
がん患者さんがサプリメントを摂取するうえでの注意点
最後に、がん患者さんがサプリメントをとるうえでの注意点です。
- 目的にあったものを自分で選ぶ（人からすすめられても冷静に判断する）
- 食べ物から摂れる成分はできるだけ食事から
- 飲むなら信じて！
- 高額なものには注意
- 主治医に相談する：とくに抗がん剤治療中には、治療に影響するサプリメントもありますので、注意してください。
というわけで、今回はがん患者さんがサプリメントを摂取することで、生存率が改善する可能性があるという研究結果を紹介しました。
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