炎症の代表的なマーカーにCRP(C反応性蛋白)があります。CRPは急性の炎症で上昇しますが、がんの原因となる慢性炎症でも高くなることがわかっています。今回、このCRPと発がんリスクとの関係が、日本の最新の研究によって明らかになりました。
はじめに
炎症の代表的なマーカーにCRP(C反応性蛋白)があります。
血液検査でよく測定する項目でもあるので、ご存じのかたもいらっしゃると思います。
このCRPですが、感染による急性炎症のときに上昇しますが、肥満や生活習慣などによって引きおこされる慢性炎症(慢性微小炎症)でも高くなります。
CRPの一般的な基準値は0.3 mg/dL 以下となっていますが、基準値内でも高い場合には、慢性炎症の存在が疑われます。
慢性の炎症は、がんの原因のひとつと考えられていますが、果たしてCRPが高い人はがんになりやすいのでしょうか?
今回、このCRPと発がんとの関係が、日本の最新の研究によって明らかになりました。
CRPが高値の人はがんになりやすい?
2022年2月に Br J Cancer という雑誌に報告された論文で、国立がん研究センターが実施した前向き研究(ケースコホート研究)です。
40~69歳までの日本人約3万4千人を対象として、研究開始時に健康診断などで採取した血液中のCRPの濃度を、高感度CRP検査にて測定して、その後、約15年間追跡して、がん罹患率との関連を調べました。
このうち、3,734人が、様々な種類のがんを発症していました。
CRPの値によって、4つのグループに分けたところ、最も低かったグループ(CRPの平均値は0.012 mg/dL)と比べて、最も高かったグループ(CRPの平均値は0.217 mg/dL)では、がんを発症するリスクが28%も高くなっていました。
CRPはがんでも上がりますので、研究開始時にすでにがんがあったんではないかという疑問がありますが、観察期間の最初の9年にがんを発症した人を除いた解析でも、同じような結果が得られたということです。
がんの種類別(18種類)にCRP濃度と発症リスクを調べると、血中CRP濃度が上昇するにつれて、大腸がん(39%)、肺がん(39%)、乳がん(62%)、胆道がん(92%)、腎がん(255%)、白血病(105%)のリスクが高くなっていました。
以上の結果より、慢性炎症のマーカーである血中CRP濃度が高い人では、がんに罹患するリスクが高いことが分かりました。
慢性炎症を防ぐ方法は?
普段のCRPが高い人は、がんのリスクが高いため、注意が必要です。
また、慢性炎症を抑える方法としては、ふだんから肥満を防いで体型を保つこと、定期的に運動をすること、禁煙・節酒、それから炎症を抑える食品を多く摂ることなどがあります。
炎症を抑える代表的な食べ物には、アボカド、グレープフルーツ、ベリー類などのフルーツ、ほうれん草、ブロッコリー、レタスなどの野菜、オメガ3脂肪酸が含まれているサーモンなどの魚介類(とくに青魚)、ナッツ、オリーブオイル、ターメリック(うこん)などがあります。こういった食品をとるように工夫してみましょう。
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