がんに対してベストの治療を選択したとしても、残念ながら再発することもあります。ただ、再発するリスクが低いにもかかわらず、過度におそれている患者さんがいます。がんのなかには再発しやすいがんと、再発しにくいがんがあります。今回は、再発しにくい(再発リスクが低い)がんの特徴を5つあげてみます。
はじめに
がんの治療では、必ずしも期待する結果が得られるとは限りません。ベストの治療を選択したにもかかわらず、残念ながら再発することもあります。
ただ、なかには、再発するリスクが低いにもかかわらず、過度に再発をおそれている患者さんがいます。
もちろんどんながん患者さんでも「100%再発しない」という保証はないわけですが、自分のがんの再発リスクをきちんと知ることは重要です。
がんのなかには再発しやすいがんと、再発しにくいがんがあることがわかっています。では、「再発しにくいがん」とはどういったがんでしょうか?
今回は、再発しにくいがんの特徴を5つあげてみます。
再発しにくいがんの特徴
1.ステージが低い
がんにはステージ(病期)があり、腫瘍の大きさ(または、がんが臓器に入り込んだ深さ)、リンパ節転移の有無(または個数)、および他の部位・臓器への転移の有無によって決定します。
最も初期のものがステージI(がんが小さいか、浅い層にとどまった状態)で、最も進んだものがステージIV(がんが遠くの臓器に転移している状態)です。
当然ですが、ステージの低いがんは、ステージの高いがんにくらべて再発しにくい傾向にあります。つまり、ステージIやIIは、ステージIIIよりも再発しにくいといえます。
ステージを決めるそれぞれの因子については、がんのサイズが小さい場合、リンパ節への転移がない(または少ない)場合、がんがまわりの組織へ広がっていない場合には、治療後に再発するリスクは低くなります。
2.手術(治療)前の腫瘍マーカーが陰性
これは、ひとつの目安で、絶対ではないのですが、手術前(あるいは治療前)の腫瘍マーカーの値が、再発と関係しているという研究結果があります。
手術前の腫瘍マーカーが正常値を超えて非常に高い場合には、がんの総量が多いということを反映していますので、再発のリスクが高くなります。
逆に、手術前の腫瘍マーカーが陰性(正常範囲内)のがん、もしくは、陽性であっても正常範囲の上限に近い場合には、再発しにくいといえます。
ただ、すべてのがんで腫瘍マーカーが上昇するわけではありませんので、くりかえしになりますが、絶対ではありません。
3.がんの分化度が高い
がんの悪性度を決める因子としてがんの分化度があります。がんは顕微鏡の検査によって、低分化がん(あるいは未分化がん)、中分化がん、高分化がんに分類されます。
分化とは、「どの程度もとの正常な細胞の特徴を残しているか」のことです。「分化度が高い」というのは、がん細胞が正常の細胞に近いということで、逆に「分化度が低い」というのは、正常の細胞からかけ離れているという意味です。
一般的に、分化度が高いほうが悪性度は低くなりますので、「高分化型」のがんは、「中分化型」あるいは「低分化型」のがんに比べて再発しにくいといえます。
4.脈管侵襲がない(または軽度)
切除したがんの顕微鏡検査で、くわしいがんの広がりの検査項目があるのですが、そのなかに、脈管侵襲というのがあります(記号は、lyとかvと書かれています)。
これは、がん細胞が、近くのリンパ管や血管のなかに入り込んでいるかどうかのことです。
つまり、リンパ管にがんが侵入していなければly0、侵入していれば、その程度に応じてly1、ly2、ly3となります。
同様に、血管にがんが侵入していなければv0となりますし、侵入していれば、その程度に応じてv1、v2、v3となります。
たとえば、ly0、v0(脈管侵襲なし)であれば、再発しにくいといえます。
5.重い持病(併存疾患)がない
これは、がん自体の特徴というよりも、患者さん側の因子ですが、おもい持病がない患者さんのほうが、再発しにくいことが研究から明らかになっています。
たとえば、糖尿病、心臓病、肺の病気などです。こういった持病があると、がんが再発するリスクが増えるということです。
これは、持病によって免疫のシステムが弱っていることや、術後の合併症が増えること、また、抗がん剤などによる補助療法がきっちりと受けられないことなどが関係していると考えられています。
ですから、重い持病がない人は、再発しにくいといえます。
まとめ
再発しにくいがんの5つの特徴でした。
これらのうち、多くが当てはまる場合には、再発リスクは低いと考えられます。
ですので、過度に再発を怖れる必要はないと思います。
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