1日に最低3回「あること」をするだけで、がんの死亡リスクを減らせる可能性があるというお話しです。
はじめに
がんの予防のためには、生活習慣が重要だということは何度もお話ししていますが、なかでも、「体を動かすこと」は手軽にできるがん予防法です。
過去の観察研究でも、身体活動量が多い人(活発に動く人)のほうが、がんになるリスク、あるいはがんで死ぬリスクが低いことが報告されています。
ただ、これまでの研究では、どのくらい体を動かせばいいのか、という基準ははっきりとしていませんでした。
この1つの理由として、過去の研究では、ほとんどが自己申告制(つまりアンケート調査)が採用されていたからで、「どのくらい体を動かしているか?」ということを客観的に評価することが難しかったからです。
今回、ウェアラブルデバイスを用いた画期的な研究結果が報告されました。
がんのリスクを下げるVILPA(ヴィルパ)とは?
ネイチャーの姉妹雑誌、Nature Medicine に報告された論文です。
オーストラリアとイギリスの合同研究チームは、UKバイオバンクという観察研究に参加している一般の国民のうち、「決まった運動週刊がない(つまり、意識して運動をしていない)」と答えた2万5千人以上(平均年齢が62歳)を対象として、7日間、ウェアラブルデバイスで日々の体の動きを記録しました。
そして、その後約7年間におけるがんなどによる死亡率との関係を調べました。
とくに、身体活動のなかでも、「短い時間(1,2分間以内)の激しいからだの動き」に注目し、これを、VILPA(ヴィルパ:Vigorous Intermittent Lifestyle Physical Activity)と名付けました。
そのまま訳すと「激しく一時的な日常生活における身体活動」ということです。
具体的には、バスに乗り遅れそうになって、早足で追いかける動作や、ペットとの早足の散歩、階段をかけ上がる、といった動作です。
あとは、掃除などのちょっときつい家事も、VILPAになると思います。
結果ですが、一日にこのVILPAがまったくなかった人に比べて、VILPAが1回あった人ではがんによる死亡リスクが低下しており、1日に3回VILPAがあった人では30%~40%も低下していました。
VILPAの回数が増えるにつれて、がんの死亡リスクが減っていました。
また、回数だけでなく、1回のVILPAの時間が、4~5分と長くても、同じようにがんの死亡リスクがおよそ30%低下していました。
まとめ
以上の結果より、1日に数回、ちょっときつめに動くことで、がんのリスクを減らすことができるという結論です。
この日常生活における「VILPA」ですが、例えば、通勤や買い物で、いつもより少し早足で歩いてみる、あるいは、エレベーターやエスカレーターは使わずに、階段をつかってみる、といったちょっとした心がけで、増やすことができます。
可能であれば、余暇(週末)にまとまった運動をして、平日は、VILPAを意識するのがベストですね。
あるいは、定期的に運動をしていない人でも、とくに、こういった日常生活における「体の動き」を意識するだけでもいいと思います。
というわけで、今回は、がん死亡が減少する1日たった3回のVILPAというお話しでした。
#がん予防 #運動 #身体活動 #ヴィルパ #VILPA
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