がん患者さんにとって、筋肉・筋力を維持することはとても重要です。しかし、いったん失った筋肉をとりもどすことは簡単ではありません。今回は、短期間で筋肉をつける3つのコツを紹介します。
はじめに
がん患者さんにとって、筋肉が必要であることは、以前の動画でもお伝えしました。
たとえば、筋肉量や筋力が減っているがん患者さんは、手術後の合併症が増えて、生存期間が短くなること。
筋肉量が減っている患者さんは、抗がん剤治療で副作用が強くでることが多く、治療成績が悪くなること。
つまり、どんな治療を受けるとしても、筋肉量を維持あるいは増やすことが、がん治療を成功にみちびくポイントになります。
とはいえ、がん患者さんでは、そもそも診断された時点で筋肉が減っていたり、あるいは、治療の影響で筋肉が減ることが多く、しかも、いったん失った筋肉をとりもどすことは簡単ではありません。
そこで今回は、がん患者さんが短期間で筋肉をつける3つのコツを紹介します。
がん患者さんが短期間で筋肉をつける3つのコツ
- 下半身の筋トレ
- 筋トレ後のプロテイン(とくにホエイプロテイン)
- HMB3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-ヒドロキシイソ吉草酸)です。
1.下半身の筋トレ
人のからだの筋肉の約70%が下半身に集中しているといわれていますので、上半身よりも下半身を強化することで、効率よく筋肉量を増やすことができます。
下半身を鍛える筋トレには色々あるんですが、簡単にできる スクワットとカーフレイズをおすすめします。
スクワットは、足を肩幅に開いて立ち、お尻を引きながらゆっくりとしゃがみ、ゆっくりと立ち上がります。
スクワットでは、できるだけ深くしゃがむのがポイントです。
きつい人は、椅子を使って、椅子から立ち上がるスクワットからはじめてもいいと思います。
スロースクワットもオススメです。
スクワットによって、おもに、太もも、お尻の筋肉を鍛えることができます。
カーフレイズは、かかと上げ運動、あるいはかかと落としとも呼ばれています。
まっすぐに立った状態で、ふくらはぎの筋肉を意識しながら、つま先立ちをくりかえします。
おもにふくらはぎの筋肉を鍛えることができます。
これも、きつい人は、椅子などにつかまって行うと楽になります。
2.筋トレ直後のホエイプロテイン
私は、筋肉を維持・増加させるため、患者さんにはホエイプロテイン(乳清タンパク質)の摂取をオススメしています。
他の大豆プロテインなどでもいいのですが、ホエイプロテインのほうが吸収が早いことがわかっています。
とくに、ホエイプロテインを筋トレ直後に飲むことをおすすめしています。
じっさいに、筋トレ後のホエイプロテイン摂取が、筋肉量の維持・増加および身体機能の改善に有効であるという、ランダム化比較試験の結果が日本から報告されました。
この研究では、高齢の女性を対象として、
1.筋トレ+プロテイン群
2.筋トレのみ群
3.プロテインのみ群
の3つのグループに分けて、24週間後に筋肉量を測定しました。
その結果、筋トレ+プロテイン群では、骨格筋の量がいちばん増加していました。
ホエイプロテインは市販のものがいろいろありますので、口に合うのを選んでもらえればいいと思います。
3.HMB
HMBとは3-ヒドロキシ イソ吉草酸(β-hydroxy-β-methylbutyrate)の略で、必須アミノ酸の「ロイシン」の代謝物のことです。
最近、このHMBが筋肉の分解を防ぐサプリメントとして注目を集めています。
動物を用いたがんの悪液質(カヘキシア)のモデルでは、HMBの投与が筋肉重量および体重の減少を防ぐことが示されています。
カヘキシアを認める32人の進行がん患者(ステージ4)を対象としたランダム化比較試験において、HMBなどを投与したところ、筋肉量が増加し、がんの症状も改善したと報告されています。
さらに、サルコペニア(筋肉やせ/筋力低下)を認める高齢の胃がん患者さんに、術前から運動療法(ウォーキング、筋トレ)と栄養サポートに加え、HMBの投与を行ったところ、サルコペニアが改善し、手術後に重大な合併症はみられなかったとのことです。
まだ人における臨床データは少ないですが、筋肉量を維持あるいは増やすためには、HMBの摂取が有効だと思います。
最近では、サプリメントとして、いろいろなメーカーから販売されています。
HMB入りのホエイプロテインも販売されています。
DNS ホエイプロテインSP フルーツミックス風味(1000g)
まとめ
というわけで、短期間で筋肉をつける3つのコツとして、下半身の筋トレ、筋トレ後のホエイプロテイン、そして、HMBでした。
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