がん患者さんに頭痛がみられることは多いのですが、なかには、放っておけない危険な原因による頭痛があります。緊急受診が必要な、がん患者の危険な頭痛3つを紹介します。
はじめに
がん患者さんに頭痛がみられることは結構多いのですが、ほとんどは、偏頭痛や、肩こりや眼精疲労に伴う原因がはっきりしない慢性的な頭痛です。
この場合、自然によくなったり、頭痛薬で軽快することが多いので、様子をみてもいいと思います。
一方で、がん患者さんの頭痛のなかには、いくつか命に関わる危険な原因もあります。もちろん自分で判断するのは難しいのですが、頭痛の原因をしっておくことは大切です。
ということで、がん患者さんの危険な頭痛の原因を3つあげて解説します。
1.頭蓋内圧亢進
頭痛の原因のなかでも最も危険なのが、脳転移や脳腫瘍が大きくなって、頭の中の圧が高くなっている状態です。
頭蓋内圧亢進は命にかかわる状態で、緊急で処置が必要となりますので、がん患者さんがもっとも注意すべき頭痛の原因といえます。
ちなみに脳に転移しやすいがんとしては、肺がん、乳がん、大腸がん、悪性黒色腫(メラノーマ)などがあります。
すでに脳転移があるとわかっている人では、とくに注意が必要です。
頭蓋内圧亢進の場合、「今まで経験したことのない激しい頭痛」、「どんどん悪化する頭痛」を訴えることが多いといわれています。
脳転移にともなう頭蓋内圧亢進では、早朝のみの頭痛がみられることがあります。
頭痛に加えて、めまいや悪心・嘔吐、視力障害、しびれ、意識障害などが出現することもあります。
また、脳に対する放射線治療後に、脳の腫れが悪化して、頭蓋内圧が亢進することもあります。
2.髄膜へのがんの浸潤
次に危険な頭痛は、がんの髄膜への浸潤(広がること)です。
髄膜とは、脳を包み込んで保護している膜のことです。
がん細胞が髄膜に広がると、髄膜刺激症状として、頭痛がみられることがあります。
がん細胞が「くも膜下腔」へ侵入して、髄液のなかに広がった状態を髄膜播種といいます。
これは、かなりがんが進行した状態で、危険な徴候です。
髄膜播種をおこしやすいがんの種類としては、脳転移と同じように、肺がん、乳がん、悪性黒色腫などが多いといわれています。
先日、お亡くなりになった歌手の水木一郎さんも、所属事務所によると、肺がんの脳転移、リンパ節転移、そして、髄膜播種による、厳しい症状があったということです。
というわけで、がんが髄膜へ広がると、頭痛をひきおこすことがあります。
3.感染性髄膜炎
これは、名前の通り、細菌やウイルスが血液を介して髄膜に感染して炎症を引き起こした状態です。
発熱、頭痛、吐き気・嘔吐などからはじまり、進行して重症化すると、意識障害がでて、命をおびやかすこともあります。
また、髄膜炎の特徴的な症状として、首を動かしにくくなる硬直(項部硬直)がみられることもあります。
感染性髄膜炎は、免疫(感染に対する抵抗力)が弱った人に発症しやすいのですが、例えば、抗がん剤治療中の患者さんにみられることもあります。
まとめ
というわけで、がん患者さんの危険な頭痛の原因として、頭蓋内圧亢進、髄膜への浸潤、そして、感染性髄膜炎でした。
これ以外にも、頭痛の原因として、帯状疱疹、発作性の高血圧、くも膜下出血などがあります。
これまでと違って痛みが激しい場合、どんどん悪化する場合、また、いつもよりも長く続く場合には、かかりつけの病院に相談して、必要があれば受診することをおすすめします。
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