がんの予防や再発リスクを減らすために、何を食べるかはもちろん重要なのですが、じつは、「いつ食べるか?」つまり、食事の時間も重要なのです。今回は、おそい夕食あるいは夜食でリスクが上昇するがんを3つ紹介し、対策についてもお話します。
はじめに
がんの予防や再発リスクを減らすために、何を食べるかももちろん重要なのですが、じつは、「いつ食べるか?」、つまり食事の時間も大切というお話をします。
みなさんは、夕食は何時に食べて、何時に寝ていますか?
私もそうなんですが、遅い時間に夕食を食べて、すぐ寝たり、夜中にあばれてしまって遅い時間に夜食を食べてしまい、朝、おなかが張って目覚めが悪いことってありませんか?
「食べてすぐに寝ると体に悪い」、あるいは、「寝る前3時間は食べない方がよい」とはよく言われますが、じつは、夕食や夜食の時間と一部のがんのリスクには関係があるのです。
今回は、食事の時間によってリスクが増加するがんについての研究を紹介します。
遅い夕食でがんのリスクが増加
まずは、もっとも大規模な疫学研究を紹介します。2018年に Int J Cancer に報告された論文です。
4万人以上の健康なフランス人(夜勤ではなく、通常の日勤業務をしていた成人)を対象として、食事の時間とがんの発症リスクとの関係を調査した前向き研究です。
1日の最後の食事(夕食または軽食)を夜9:30以降に食べる人では、9:30より前に食べる人に比べて、乳がんになるリスクがおよそ1.5倍、前立腺がんになるリスクが2.2倍にも高くなっていました。
夕食(あるいは夜食)の時間だけで、がんのリスクがこんなに高くなるという結果です。
次に、同じ2018年にInt J Cancerに報告されたスペインからの研究です。この研究では、621 人の前立腺がん患者、1,205人の乳がん患者と、がんのないコントロール群で、食事の時間などを比較しました。
その結果、夕食後2時間以上経ってから寝たグループに比べ、夕食後すぐに寝たグループでは、乳がんのリスクが16%、前立腺がんのリスクが26%高くなっていました。
乳がんと前立腺がんの両者を合わせると、20%高くなっていました。
同じように、夕食を午後9時以前に食べている人では、10時以降に食べている人に比べて、がんのリスクが高くなっていました。
最後に、中国からの研究です。2018年にMedicineという雑誌に報告された論文です。166人の大腸がんの患者さんと、同じ数の健常者について、食事の時間や睡眠、運動などについて調査しました。
その結果、夕食からベッドに入るまでの時間が長い(4時間以上)人に比べて、短い(2~3時間)人では、大腸がんのリスクが2.5倍にも高くなることが明らかになりました。
つまり、やはり、食後すぐに寝ることで、大腸がんのリスクも高くなるという結果です。
さらに、この研究では、夕食後の散歩についても調査していますが、夕食後に散歩する人は、散歩しない人に比べて大腸がんのリスクが66%も低下していたということです。
以上の結果より、遅い時間の夕食あるいは夜食によってリスクが上昇するがんは、乳がん、前立腺がん、そして、大腸がんでした。
夜間の絶食時間が乳がん患者の予後(生存期間)に影響
こういった食事の時間は、がん患者さんの予後にも影響することがわかっています。
たとえば、乳がん患者さんを対象とした研究では、夜間の絶食時間が13時間未満であった患者では、13時間以上であった患者に比べ、再発率が36%高かったとのことです。
つまり、夕食や夜食が遅くて、かつ朝食が早い乳がん患者さんは、再発しやすくなるというデータです。
では、どうして遅い夕食ががんのリスクを高めるのでしょうか?
はっきりとした理由はわかっていませんが、食事の時間とサーカディアンリズムとの関係が注目されています。
夕食の時間とサーカディアンリズム
サーカディアンリズムとは、体内時計とも呼ばれ、睡眠・覚醒のサイクルをはじめ、体温や血圧、脈拍の調節、ホルモンの分泌など、体の基本的な活動を24時間周期で調節してくれるリズムのことです。
つまり、夕食を遅くとると熟睡できないために睡眠障害を引きおこし、サーカディアンリズムが乱れて、メラトニンなどのホルモンの分泌が変化して、乳がんや前立腺がんといったホルモンとの関係が強いがんのリスクが高まる可能性があると考えられています。
また、食事を寝る直前にとることは夜間の高血糖状態や肥満につながることより、大腸がんなどの肥満や糖尿病に関連したがんのリスクが高くなると考えられます。
まとめ
いずれにしても、遅い時間の夕食(あるいは夜食)はがんのリスクを高める可能性があります。
これらのがんを予防するためには、まず、夕食はできるだけ早い時間にとりましょう。
また、夕食後にすぐ寝るのは避けて、少なくとも3時間以は時間を空けてベッドに入る習慣をつけましょう。
さらに、もし可能であれば明るいうちに夕食をすませ、その後、軽い運動や散歩などをおすすめします。
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