胃がんの最大の原因はピロリ菌ですが、それ以外にもリスクを高める要因があります。今回は、胃がんの疫学研究プロジェクト(StoP)によって報告された論文から、胃がんのリスクを高める食べもの・飲み物を3つ紹介します。
はじめに
胃がんは、日本において、現在でも死亡者数がとても多いがんのひとつですが、今回は、胃がんのリスクを高める食べもの・飲み物についてのお話です。
胃がんの最大の原因は、ご存じのように、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染です。
ただ、ピロリ菌に感染しても、すべての人が胃がんになるわけではありません。
胃がんのリスクを低くしたり、高くしたりする因子は他にもあります。
たとえば、ある特定の食品を多く摂ることで、胃がんのリスクが高くなることがわかっています。
ただし、これまでは、それぞれの研究によって結果が異なる場合もあって、統一した見解は得られていませんでした。
そこで、2012年に、世界中の医師や研究者が集まって、Stomach cancer Pooling (StoP) Projectというプロジェクトを立ち上げました。
このプロジェクトでは、研究者どうしで、信頼できる胃がんについての疫学研究を持ち寄って、より多くの対象者で大規模な解析を行うというものです。
最初は10件の研究から始まったそうなのですが、現在は30を超える研究が蓄積されていて、おもに、食べものなどの生活習慣と胃がんとの関係についての論文が次々と報告されています。
今回は、このStoPプロジェクトによって報告された論文から、胃がんのリスクを高める飲食物を3つ紹介します。
1.塩
これは、聞いたことがある人も多いと思います。
これまでにも、塩あるいは塩辛い食べものの摂取量が多い人では、胃がんのリスクが高まることがわかっていましたが、今回の大規模な研究で、さらに、リスクがはっきりとしました。
まず、薄味が好みの人に比べて、塩辛い味が好みの人では、胃がんのリスクが59%高くなっていました。
また、食卓塩を使わない人に比べて、いつも使う人では胃がんのリスクが33%高くなっていました。
さらに、高塩分の食品と塩づけの保存食の摂取量がもっとも多い人では、少ない人に比べて、胃がんのリスクが24%高くなっていました。
さらに、注意しないといけないのは、ピロリ菌が陽性の人で、かつ塩を多くとるグループでは、胃がんのリスクが2.6倍にも高まるというデータです。
2.アルコール
お酒の種類にかかわらず、アルコールを多く摂取することは、ピロリ菌が陽性の人における胃がんのリスクを38%増加させるという研究結果です。
また、アルコールに関しては、最近、日本人を対象とした6つの集団研究をまとめて解析した研究が報告されました。
この結果でも、男性では、お酒を飲む人では、飲まない人に比べて、胃がんのリスクが高くなっていました。
たとえば、1日にエタノール換算で92g以上のアルコール(日本酒だと5合弱くらい)を摂取する人では、まったく飲まない人に比べて、胃がんのリスクがおよそ30%高くなっていました。
というわけで、お酒は、とくに男性では、胃がんのリスクを高めるという結果です。
3.肉
これは、ちょっと意外に感じる人もいると思います。
というのは、これまでの研究では、肉(とくに加工肉)の摂取量が多い人では、大腸がんのリスクが高くなると報告されていて、胃がんのリスクについては、はっきりとわかっていませんでした。
今回のStoPプロジェクトによる研究では、赤肉(牛、豚、羊の肉)の摂取が最も多い人では、少ない人に比べて、胃がんのリスクが24%、加工肉では、23%、そして、すべての種類の肉では、30%も高くなっていたとのことです。
ですから、種類を問わず、赤肉でも鶏肉でも、加工肉でも、食べすぎると胃がんのリスクが高くなるという結果でした。
まとめ
StoPプロジェクトで明らかになった、胃がんのリスクを高める3つの飲食物は、塩、アルコール、そして、肉でした。
#胃癌のリスクを高める食べもの #飲酒 #減塩
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