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【注意】がんのリスク高める一般のくすり3種

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慢性の病気に対する一般のくすりのうち、がんのリスクを低下させたり、あるいは増加させるものがあります。今回は、研究によってがんの発症リスクが上昇する可能性が指摘されている3種類の薬について解説します。

1.降圧剤(ACE阻害剤)
2.糖尿病の薬「ピオグリダゾン」
3.プロトンポンプ阻害剤(PPI)

はじめに

高血圧や糖尿病、脂質異常症あるいは、逆流性食道炎といった慢性の疾患に対して、長期にわたって薬を飲んでいる人は多いと思います。

もちろん、対象となる病気の治療のために飲んでいるわけですが、とくに長期間になると、他の病気に対する影響がでる場合があります。

以前の動画では、こういった慢性疾患の治療に使う一般のくすりのうち、アスピリン、メトホルミン、スタチンといった、がんのリスクを低下させるものを紹介しました。

ところが、注意しないといけないのは、こういったがんのリスクを低下させる薬がある一方で、がんのリスクが増加する薬もあることです。

今回は、知っておくべき、がんのリスクを高める一般のくすりについてお話します。

がんのリスクを高める一般薬

1.降圧薬(ACE阻害薬)

高血圧で治療している人は多いと思いますが、なかでも、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)を服用している人は結構いらっしゃるのではないでしょうか。

有名なものでは、カプトリル、レニベース、ロンゲス、タナトリル、エースコールなどがあります。

2018年に、このACE阻害薬によって、肺がんのリスクが高まることがイギリスの医学雑誌BMJ(ブリティッシュメディカルジャーナル)に報告されました。

カナダの99万人以上の高血圧で治療を受けている人を平均で6.4年間にわたって追跡調査した研究です。

高血圧の治療薬で治療していた人のうち、ACE阻害薬を内服していた人では、他の薬で治療を受けていた人に比べて、肺がんの発症リスクが14%高くなっていました

服用期間が長ければ長いほど、リスクが高まるとのことで、5年以上服用すると、肺がんのリスクが22%、10年以上になると31%にも上昇していたとのことです。

高血圧のくすりが、がんのリスクを高めるという研究結果は、日本からも報告されています。

2021年の5月に Cancer Science という雑誌に報告された、日本人を対象とした大規模な前向き研究です。

高血圧に対して、色々な種類の降圧薬を飲んでいた人を追跡調査した結果、長期内服によって、全てのがん、大腸がん、そして、腎臓がんの発症リスクが上昇していました。

とくに、腎臓がんについては、5年以上の服用によって、罹患するリスクが2~4倍ちかくまで上昇していました。

ただ、この研究では、降圧薬の種類まではわからないため、どのタイプの薬ががんのリスクを高めていたかについては不明です。

2.糖尿病の治療薬 ピオグリタゾン

糖尿病の治療薬で、ピオグリタゾンという血糖を下げる薬があります。商品名は、アクトス、あるいは、メタクト配合錠、ソニアス配合錠などがあります。

この薬は、膀胱がんのリスクを高めるという研究報告があります。

2016年にBMJ(ブリティッシュメディカルジャーナル)という雑誌に報告された論文です。
カナダの145,806人の糖尿病の治療を受けた患者さんを対象として、膀胱癌との関係を調査した研究です。

ピオグリタゾンで治療していた人では、他の糖尿病の薬で治療を受けていた人に比べて、膀胱がんの発症リスクが63%も高くなっていました

さらに、薬の量が多いほど膀胱がんのリスクが上昇しており、さらに、治療期間が長くなるにつれて、リスクが上昇していました。

ですので、長期にわたってこの薬を飲んでいる糖尿病の患者さんは、注意が必要になってきます。

3.プロトンポンプ阻害剤

胃腸のくすりとして、よく使われるもののなかに、プロトンポンプ阻害剤(PPI)というのがあります。

これは、胃酸分泌を抑えて、胃潰瘍などを治療し、逆流性食道炎に伴う痛みや胸やけなどを和らげる薬です。

ピロリ菌の除菌治療にも、抗生剤と同時に投与されます。

具体的には、オメプラール、オメプラゾン、タケプロン、パリエット、 ネキシウム、タケキャブ、といった薬になります。

とてもいい薬で、胃酸の分泌を強力に抑えて、胸焼けなどを改善するので、よく処方されます。

通常は短期間の使用(たとえば、2週間とか、4週間とかの期間)が原則で、長期にわたって処方されることは少ないのですが、なかには、やめると症状が悪化する人や、潰瘍や食道炎の維持療法として、長期にわたって使用されているケースもあります。

この、長期にわたるプロトンポンプ阻害剤の使用が、とくに最近、すい臓がんをはじめ、色々な部位のがんのリスクを高めるという報告がでてきました。

2020年の4月に、J Gastroenterologyという雑誌に報告された論文です。

スウェーデンにおける国民ベースの大規模な集団研究ですが、およそ80万人の、プロトンポンプ阻害剤を長期に内服している成人を対象として、すい臓がんの発症リスクを、一般的な国民での発症リスクと比較しました。

この研究では、180日(およそ6ヶ月)以上のプロトンポンプ阻害剤の内服を、長期の使用ということにしました。

その結果、プロトンポンプ阻害剤を長期に内服している人では、すい臓がんの発症リスクが、一般国民の発症リスクと比べて、2.2倍に上昇していました。

とくに、40歳以下の人でプロトンポンプ阻害剤を長期に内服している人では、すい臓がんのリスクが8.9倍にも上昇していました。

これ以外にも、長期のプロトンポンプ阻害剤の使用によって、胃がん、大腸がん、胆道がん(胆管がんや胆嚢がん)の発症リスクが上昇するという研究結果が報告されています。

なぜ、長期のプロトンポンプ阻害剤の使用が、がんを引き起こすかというメカニズムについては、まだはっきりはしていません。

ひとつの可能性として、腸内細菌に与える影響が関係していると考えられています。

つまり、プロトンポンプ阻害剤が胃酸をブロックすることで、口から入った細菌が、死なずに、十二指腸や小腸、そして、大腸まで到達することで、なんらかの「がんになりやすい腸内環境」に変わる可能性があります。

まとめ

以上、まとめますと、降圧薬(とくにACE阻害剤)、糖尿病のくすり ピオグリタゾン、そして、胃薬のプロトンポンプ阻害剤の3つによって、一部のがんのリスクが増えるという研究結果を紹介しました。

ただ、こういったお薬を飲んでいるから、絶対にがんになるというわけではありませんし、自己判断で中止するのも危険です。

もし、気になる場合には、他のくすりに変更が可能かどうかについて、必ず主治医と相談してください。

 

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  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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