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【実践】がんで死なない!外科医がすすめる週30分「ほどほど」筋トレ

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筋力トレーニング(筋トレ)で本当にがん死亡のリスクが減るのか?、また、がん予防のためにはどのくらい筋トレをするのがベストか?についてエビデンスに基づいて解説します。

はじめに

今回は、筋トレとがんの関係についてのお話です。

わたしは外科医として、多くのがん患者さんをみてきました。

そして、がんに負けないためには、筋肉がとても大切であることを実感しています。

ですから、すべてのがん患者さんには「筋トレ」をおすすめしてきました。

昨年には、「がんに負けないたった3つの筋トレ」という本を出版させていただき、多くのかたに読んでいただきました。

この本では、がん患者さんにとって、筋トレがなぜ必要か、また、具体的にはどういった筋トレがおすすめか、といったことをわかりやすく解説しています。

また、がんを予防したい人にとっても、筋トレは重要です。

皆さんのなかには、「筋トレとがんに何の関係があるの?」と思っている人もいらっしゃるかもしれません。じつは、筋トレとがんは深い関係にあるのです。

今回は、筋トレで本当にがんのリスクが減るのか?ということと、どのくらい筋トレをするのがベストか?についてお話します。

この動画では、
1.筋トレが「がん」を抑える理由
2.筋トレでがんのリスクが低下?
3.がん防ぐベストの筋トレ時間は?

という3つの項目について、くわしくお話します。

がんの予防や、がんになったときの治療の成功や生存率の改善に役立つ内容ですので、ぜひ最後までご視聴ください。

1.筋トレが「がん」を抑える理由

これまでの研究によって、いくつかの理由がわかってきました。

筋トレで天然の抗がん剤「マイオカイン」が分泌

筋トレなどの運動をすると、筋肉からさまざまな生理活性物質が血液の中に分泌されますが、これをマイオカイン(myokine)と呼びます。

マイオカインには、糖尿病や肥満など生活習慣病に対する予防効果があることがわかっていますが、イリシンやSPARC、インターロイキン6といった一部のマイオカインには、がんの増殖を抑制する作用があるものが発見されています。

つまり、筋トレで血液のなかに天然の抗がん剤マイオカインが増えて、がんができにくくなります。

筋トレによって血液中の免疫細胞が増加

筋トレなどの運動をすると、その直後から血液の中に免疫細胞が増えることが確認されています。

なかでも、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)はもっとも運動に反応して増加することがわかっています。

このNK細胞は、全身をパトロールしているリンパ球で、真っ先に敵を見つけては攻撃します。

ですので、たとえがん細胞が発生したとしても、筋トレによって血液中に増えた免疫細胞が、がん細胞を見つけて除去してくれると考えられます。

筋トレは血糖値の上昇およびインスリンの分泌を抑える

がんの一つの危険因子に、肥満や糖尿病があります。つまり、肥満や糖尿病の人は、大腸がんなどのがんの発症リスクが高くなります。

筋トレによって、血糖値の上昇が抑えられ、がんの原因となる肥満や糖尿病を防ぐことがわかっています。

同時に、発がんを促進するといわれているインスリンの分泌をおさえることができます。

以上のような理由によって、筋トレががんの発生を抑えていると考えられます。

2.筋トレでがんのリスクが低下する?

では、じっさいに、筋トレをしている人は、がんのリスクが減るのでしょうか?

これについては、いくつかの研究があります。

まずは、イギリスにおける8万人以上の国民を対象とした大規模な研究で、2017年に Am J Epidemiol という雑誌に報告された論文です。

結果は、週に2回以上、筋力トレーニングをしている人は、そうでない人に比べて、すべての死因による死亡リスクが23%低く、なかでも、がんによる死亡リスクは31%低かったとのことです。

ちなみに筋トレの方法に関しては、専用のマシンを使わない自重トレーニング(自分の体重を負荷として利用する筋トレ)も、ジムなどで行われる筋トレと同等の効果があると認められたということです。

つまり、自宅でできる筋トレで十分ということです。

また最近、日本の研究チームからも、筋トレとがん死亡率との関係を調査した研究結果が報告されました。

今年の2月に Br J Sports Med という雑誌に報告された論文で、筋トレとがんなどによる死亡率との関係についての過去の研究を総合的に解析した研究です。

この研究によると、筋トレをすることで、がんによる死亡リスクが12%、すべての死因による死亡リスクが15%低下していました。

以上の結果より、研究によって若干ちがいますが、筋トレでがんによる死亡リスクが10~30%も低下するという結論です。

3.がん予防:ベストの筋トレ時間は?

では、筋トレでがんのリスクが下がるとしたら、どのくらいの時間、やったらいいのでしょうか?

先ほどの日本の研究チームからの報告では、がんの死亡リスクは、筋トレの時間が週30分で最も低くなっていました。

ところが、筋トレ時間が週に130分を超えると、逆に死亡リスクは高くなることがわかりました。

つまり、ほどほどがベストということです。

週に30分ですと、1回15分の筋トレを週に2日、あるいは1回10分を週に3日間やればいいということになります。

この程度ですと、続けることができるような気がします。

筋トレの内容については、先ほどの論文にもありましたが、とくにジムに通わなくても、自分の体重をつかった自重トレーニングでもいいようです。

具体的には、腕立て伏せ(難しい場合には、膝をついてもいいです)、フロントブリッジ(プランク、体幹運動とも呼ばれています)、スクワット(これも、きつい場合には、椅子から立ち上がるスクワットでもいいです)など、こういった筋トレメニューをオススメします。

今回お話した詳しい内容については、「がんに負けないたった3つの筋トレ」に書いていますので、もしよろしければ参考にしてください。

 

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外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。
  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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