現在の医療現場では、早期離床(手術後にできるだけ早くベッドから離れ、歩行などを開始すること)を目標にかかげ、術後できるだけ早くからリハビリテーションを行うのが一般的です。
一方で、最近注目されているのが、術前からリハビリを開始する「プレハビリテーション」です。
では、術前からのプレハビリテーションと術後のリハビリテーションではどちらがより効果的なのでしょうか?
今回は、プレハビリテーションと、通常の術後のリハビリの有効性について比較した研究を紹介します。
術後のリハビリよりプレハビリテーションのほうがいい
術前からのプレハビリテーションと術後のリハビリテーションではどちらがより効果的なのでしょうか?これを比較した臨床試験があります。
Prehabilitation versus rehabilitation: a randomized control trial in patients undergoing colorectal resection for cancer. Anesthesiology. 2014 Nov;121(5):937-47. doi: 10.1097/ALN.0000000000000393.
この臨床試験では、大腸がんの手術を予定した77人の患者を、プレハビリテーションを受けるグループ(38人)と術後リハビリテーション(39人)を受けるグループにランダムに割り付けました。
プレハビリテーションの内容は、運動(有酸素運動+レジスタンス運動)、栄養士による食事指導、および、精神的ケア(心理療法士によるカウンセリング)でした。
その結果、まず術直前に歩行機能(6分間歩行テスト)が改善した患者は、プレハビリテーション群(53%)で術後リハビリテーション群(15%)に比べて多くなっていました。
また、術後8週間目の歩行機能の改善率は、プレハビリテーション群(+23.7メートル)で術後リハビリテーション群(-21.8メートル)よりも有意に高かったとのことです。
つまり、手術の後2ヶ月の時点で、プレハビリテーションを実践した患者さんのほうが、より長い距離を歩けるようになっていたということです。
以上の結果より、術後の身体機能(歩行能力)回復のためには、術後のリハビリテーションだけよりも、術前のプレハビリテーションの方が有効である可能性が示唆されました。
まとめ
過去の研究によると、術後のリハビリだけよりも、術前からのプレハビリテーションのほうが、術後の回復がより早くなる可能性があります。
こういった意味からも、ぜひ、手術前からプレハビリテーションを取り入れたいものです。
この記事の内容は、『がん手術を成功にみちびくプレハビリテーション:専門医が語る がんとわかってから始められる7つのこと(大月書店)』をもとに執筆しています。
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