化学療法(抗がん剤治療)中の患者さんのなかには、いつまでこの治療が続くのか?という疑問をお持ちのかたもいると思います。じっさいには、抗がん剤治療には、大きく、期間限定の治療と、可能な限り継続する治療があります。今回は、抗がん剤はいつまで続くのか?というお話です。
はじめに
よくがん患者さんから、「抗がん剤治療はいつまで続くのですか?」という質問をいただきます。
手術だったら基本的には1回あるいは多くても2~3回ですし、放射線も回数が決まっていますよね。
ところが、抗がん剤は、短期間で行うこともありますし、様子をみながら期間を調節することもあります。
また、ずっと続けられる限り、続けるということもありますので、実際にはいろいろなパターンがあります。
そこで、患者さんとしては、「つらい抗がん剤がいつまで続くのか?」と疑問に思うわけですね。主治医に聞けば、教えてくれるんですが、なかなか聞きづらいという方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、抗がん剤治療は、期間限定なのか?一生続くのか?といったお話をします。
抗がん剤治療のパターン(種類)と期間
抗がん剤治療のパターンには、2つあって、ひとつは、期間限定のタイプと、もうひとつは、可能な限り継続するというパターンです。
まずは、期間限定の抗がん剤についてです。
期間限定の抗がん剤治療のパターン
ひとつは、術前補助化学療法、つまり、手術の前に行う抗がん剤です。
期間は色々とありますが、数週間から数ヶ月間、抗がん剤治療をおこなって、がんを小さくしておいてから、手術を行うという治療です。
比較的進行した食道がん、乳がん、すい臓がん、そして、直腸がんなどに対しておこなわれます。また、放射線を組み合わせることもあります。
もう一つは、術後補助化学療法です。
これは、手術の後で、残っている可能性があるがん細胞を、できるだけ抗がん剤でたたいて、再発を防ぐという目的で行われます。
通常は、3ヶ月から半年間と期間限定ですが、ときに、再発のリスクの高い人では、もっと長く行うこともあります。
ただし、多くの場合、術後にどのくらい長く抗がん剤治療を続けるべきか?ということを調べた臨床試験はほとんどありませんので、エビデンスはありません。
ですので、主治医の経験や考え方、そして、患者さんの希望などを参考にして、決めることになります。
抗がん剤をずっと続けるパターン
次に、可能な限り継続するパターンです。
まず、再発・転移がんに対しての抗がん剤治療です。
この場合、根治や完全寛解(がんが完全に消失すること)できる可能性は低くなってきますので、がんの進行をおさえる目的で抗がん剤治療を行います。
よく、「延命目的」とも言いますね。
抗がん剤の効果がみられて、がんが縮小したり、進行がみられない場合には、可能な限り治療を継続するということになります。
なかには、再発したがんでも、抗がん剤治療で進行せずに、数年間うまくいっているケースもあります。
患者さんとしては、やっぱり先が見えないので、いつまで続くのか?と不安になると思います。
また、現状維持という状態が続くと、「本当に抗がん剤が効いているのか?」「副作用で体がボロボロになるのではないか」といった疑問もでてくると思います。
ただ、副作用を上手にコントロールして、うまく抗がん剤治療と付き合うことができれば、いい状態で過ごすことができます。
この場合は、治療が成功していると考えることができます。
もう一つは、緩和的化学療法とよばれるものです。
これは、おもに終末期のがん患者さんに対して、生活の質を高める目的で行います。
抗がん剤治療によって、がんのつらい症状を軽くすることも可能です。
通常よりも薬の量を減らして投与することもあります。
この緩和的化学療法も、可能な限り継続する方針で行います。
まとめ
抗がん剤治療には、期間限定と可能な限り継続するパターンがあり、期間限定には、術前または術後に補助として抗がん剤治療を数ヶ月間行うパターンです。
可能な限り継続するパターンは、再発・転移に対する抗がん剤治療と、緩和的化学療法があります。
いつまで続くのか?という疑問をもたれる患者さんも多いと思いますが、患者さんの価値観や希望も大切です。
主治医と、抗がん剤の目的について、よく話し合っていただいて、後悔のない治療を受けていただきたいと思います。
#抗癌剤 #がん治療の期間 #抗がん剤いつまで #術前補助化学療法 #術後補助化学療法 #緩和的化学療法 #がん再発に対する抗がん剤 #転移がん
最新記事 by 佐藤 典宏 (全て見る)
- 余命(予後)と関係する「がん再発」4つのパターン - 2023年1月23日
- 【がん薬物療法】分子標的薬 アダグラシブ:転移を認めるステージ4「大腸がん(KRAS G12C)」に奏効率46% - 2023年1月21日
- 便秘がちな人に増える意外な「がん」とは?慢性の便秘でリスクが増えるのは大腸がんではなく・・・ - 2023年1月19日