野菜ががんのリスクを低下させて、逆に、肉(牛肉や豚肉)は食べ過ぎるとがんのリスクを高めるといわれていますので、理論的には、ベジタリアンの方が、がんのリスクが低くなると考えられますが、はたしてどうなのでしょうか?
はじめに
今回は、食事とがんとの関係についてです。
ほとんどの人は、肉も食べると思いますし、わたしも、肉も魚も大好きですし、ベジタリアンでもありません。
ただ、なかには、菜食主義者といいますか、ベジタリアン、ヴィーガン、ペスクタリアンといった、野菜だけ、あるいは、肉は食べないという食生活を送っている人もいると思います。
一般的に、野菜ががんのリスクを低下させて、逆に、肉(牛肉や豚肉)は食べ過ぎるとがんのリスクを高めるといわれていますので、理論的には、ベジタリアンの方が、がんのリスクが低くなると考えられますが、はたしてどうなのでしょうか?
今回は、肉食と菜食で、どちらががんのリスクが高くなるのかについての最新の研究結果を紹介します。
肉食と菜食、がんのリスクが高いのは?
今年の2月に、BMC Medicine という雑誌に報告された論文です。
イギリスの国民データベースに登録されている人のうち、40万人以上を対象とした大規模な前向き観察研究です。
何か特別なダイエットをしているか?という質問も含めて、食事内容のくわしい調査結果から、ベジタリアン、ペスクタリアン、魚と鶏肉は食べる人、そして、肉食のグループに分類しました。
この研究でのダイエットの定義は、「ベジタリアン」は、乳製品は摂取するが、魚、鶏肉、および赤肉(牛、豚、羊)は絶対に食べない人
「ペスクタリアン」とは、乳製品と魚は食べるが、鶏肉または赤肉は絶対に食べない人、つまり、魚は食べるベジタリアンということですね。
「魚と鶏肉は食べる人」とは、乳製品と魚、鶏肉は食べるが、赤肉は絶対に食べない人
そして「肉食」は、乳製品、魚、鶏肉、そして、赤肉も食べる人です。基本的に制限はなく、なんでも食べる人ですね。
全体の1.8%がベジタリアンで、2.3%がペスクタリアン、1.1%が魚と鶏肉を食べる人、そして、やはり肉食が最も多く、94.8%でした。
このグループにおいて、平均で10年以上の観察期間中におけるがんの発症率(すべてのがんと、19の部位別のがん)を比較して、リスクに違いがあるかを調査しました。
もちろん、ベジタリアンは、健康に気をつかっていると思いますので、たとえば、タバコやお酒は飲まない、あるいは、運動もしっかりとしている人が多いと思います。ですので、そういった他の因子のがんへの影響を除外するために、年齢、性別、人種、喫煙、アルコール、身体活動、基礎疾患、体格指数(BMI)などで調節して、比較しました。
結果ですが、肉食の人に比べて、ベジタリアンでは、すべてのがんのリスクが13%低くなっていました。
がんの種類別には、前立腺がんのリスクが43%、大腸がんのリスクが27%低くなっていましたが、他のがんでは、有意な差はみられませんでした。
そして、魚は食べるペスクタリアンでは、肉食の人に比べて、すべてのがんのリスクが7%低くなっていました。
がんの種類別には、メラノーマ(皮膚がん)のリスクが32%低くなっていましたが、他のがんでは、有意なリスク低下はありませんでした。
最後に、魚と鶏肉は食べる人では、肉食の人に比べて、がんのリスク低下はみられませんでした。
まとめ
以上の結果より、予想通り、がんのリスクという点では、野菜中心(野菜ベース)のダイエット、とくに「ベジタリアン」がいいようです。
ただ、これは、海外での調査結果ですし、必ずしも日本人に当てはまるとは限りません。また、がんに限った研究ですので、他の病気や全体の生存期間との関係は不明です。
わたし自身もそうですが、肉も魚も食べたい人がほとんどだと思いますので、野菜だけというのはちょっと寂しい感じがします。
もちろん、程度の問題ですので、肉や魚は少なめで、野菜をたくさん食べることは、がんだけでなく、他の病気を予防したり、健康を維持するうえで、大切だということですね。
#食生活とがん #ベジタリアン #ヴィーガン #ペクスタリアン #赤肉 #がんリスク
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