がん検査

話題の「がん線虫検査」ってどうなの?どんな検査で、受けるべき?がん専門の外科医の意見

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話題のがん線虫検査(N-NOSE)について、どんな検査なのかを解説し、受けるべきかどうかについて、個人的な見解をお話したいと思います。

注意:本動画はあくまで個人的な感想です。皆さんのご判断で受けるかどうかを決めて頂ければ幸いです。

はじめに

今回は、がん線虫検査についてのお話です。

最初におことわりしておきますが、これは、がんを専門とする医師としての個人的な見解です。

調べた範囲でのお話ですので、検査のことをきちんと理解できているかどうかわかりませんし、私の言っていることが正しいとは限りません。

この検査については医療者の間でも色々と意見がありますので、ひとつの参考にしていただければと思います。

おそらく皆さんご存じだと思いますが、線虫(寄生虫)を使ったがんの検査が開発されて、お金を払えば誰でも受けることができるようになりました。

寄生虫をがんの検査に使うという発想はとてもユニークで、私も、発表当初から注目していました。

がん線虫検査「N-NOSE(エヌノーズ)」

N-NOSEという検査です。HIROTSUバイオサイエンスという会社が開発、販売している商品で、サービス開始から、すでに22万人が受けたということです。

このN-NOSEですが、匂いに敏感な線虫の尿への反応を利用した世界初のがんの検査ということです。

具体的には、健康な(がんのない)人の尿を線虫がいるシャーレに落とすと、線虫は避けて離れていくということですが、がんがある人の尿には近寄ってくるということです。

この検査でわかることですが、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がん、膵臓がん、肝臓がん、前立腺がん、食道がん、卵巣がん、胆管がん、胆のうがん、膀胱がん、腎臓がん、口腔・咽頭がん、の全部で15種類のがんのリスクを高い感度で判定することができるということです。

ただ、どの種類のがんかは特定できないため、精密検査へつなげる「1次スクリーニング検査」という位置づけだということです。

もし、この検査でリスクが低いと判定されたら、定期的に線虫検査を受けることをすすめています。

また、がんのリスクが高いと判定されたら、安心アフターサービスというのがあるそうですが、基本的には、自治体の5大がん検診を受けることや人間ドックなどで精密検査を受けることを推奨しています。

この検査の値段は、定期検査コースの場合、13800円(2022年12月時点)ということで、人間ドック・がんドックや自費での画像検査などに比べてリーズナブルなことを売りにしています。

こういった検査で、がんがどこにある、という診断をつける検査ではなく、全身の色々な部位のがんのリスクが高いかどうかを評価する検査ということです。

ただ、もっとおどろいたのは、線虫の遺伝子を操作して、膵がんの患者さんの尿だけに反応しない特殊な線虫をつくりだしたというニュースです。

プレスリリースでは、この開発した特殊な線虫が「膵がんとそれ以外のがん種を識別」する能力が、非常に高い精度であること、またこの検査の実用化を2022年中(今年中)に予定していることを発表したということです。

さらに、膵がんの早期発見にも有用ということで、2021年にOncotargetという雑誌に報告された研究論文です。

この研究では、まず、膵がんの患者さん83人の手術前後の尿に対する線虫の走性指数(そうせいしすう)を比較しています。その結果、手術でがんを取り除くと、線虫はがんに反応しなくなった、ということです。

ですから、確かに、線虫は早期のがんを含めた膵がんに反応することが示されたといっています。また、治療効果を判定するのに、この検査が有用かもしれないということはわかります。

次に、ステージ0またはIAの非常に早期の膵がんの患者さん(11人)と、健常人(17人)の尿に対する線虫検査の結果を比較しています。

結果は、ギリギリ有意差がある程度で、きちんと鑑別できるというほどではないようです。

今後、より多くのサンプルで検証してもらいたいと思います。

がん線虫検査はどうなの?がん専門外科医の見解

この検査について私の見解ですが、たしかに興味深い検査だと思いますが、受けることを積極的に推奨もしませんし、否定もしません。

現時点では、小数例のがんの患者さんや健常人の尿を使った研究結果などは報告されていますが、一般の集団が受けた場合の大規模なデータがありませんので、まだ、がん線虫検査が本当に信頼できるかどうかはわからないと感じます。

ただ、がんの早期発見の重要性を考えるきっかけとしてはいいと思います。

今、日本では自治体のがん検診の受診率が低いことが問題となっています。

もしこの検査でがんのリスクが高いことがわかれば、その後の精密検査を受けるきっかけになると思いますし、会社が宣伝しているように、がんの早期発見につながるかもしれません。

ただ、「何人かの人で、がんが早期に発見されてよかった」だけではいけないわけで、リスクが低いと判定されて安心していた人にがんが見つかった場合や、リスクが高いと判定されたにもかかわらず、がんが見つからない場合もあるわけです。

15種類のがんのリスクが高いと判断されたときに、どういった検査を受ける必要があるのか、どのくらいお金がかかるのか、また、リスクが高いにもかかわらず精密検査で「どこにもがんがない」と診断された場合の対処法や心理的なストレスなども考えておく必要があります。

ですから、この検査も含めて、「がんのリスク検査」の利点と欠点をよく理解したうえで受けることはありだと思います。

というわけで、がん線虫検査に対する私の意見でした。

今後、新たな研究報告がありましたら、またアップデートしていきたいと思います。

 

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外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。
  • この記事を書いた人

佐藤 典宏

外科医(産業医科大学第1外科講師)/がん研究者/YouTube「がん情報チャンネル」登録者2万人突破!/著書に『ガンとわかったら読む本』『がんが治る人 治らない人』『がんにならないシンプルな習慣』など。がん患者さんと家族に役立つ情報を発信します。

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