糖質制限食が、がんの予防や治療に有効であるとする研究データが集まりつつあります。今回、糖質制限ダイエットが膵臓がんのリスクを低下させるという研究結果が報告されましたので、紹介します。
はじめに
糖質を減らす食事(いわゆる糖質制限食)がダイエット法として、けっこう広まってきました。
わたしも一時期、糖質制限ダイエットをやって、ずいぶん体重が減りました。今は、残念ながらもとにもどってしまったんですが。
実際に、医学的にも、糖質制限ダイエットは、肥満の予防や、メタボリックシンドローム、脂質異常症(高コレステロール血症など)、糖尿病の治療にも有効であるとするデータがでてきています。
さらに、最近では、がんの予防や治療にも糖質制限がいいのではないかという議論がでてきています。
特に、肥満が原因のがん、たとえば、大腸がん、膵臓がん、子宮内膜がん、などです。
今回、糖質制限が膵臓がんのリスクを低下させるという研究結果が報告されましたので、紹介します。
糖質制限食で膵臓がんを予防?
今年の1月にCarcinogenesisという雑誌に報告された論文です。
アメリカ人95962人を対象とした大規模な前向き研究です。
食事内容について、くわしく調査して、糖質制限をどの程度、しっかりと守っているかをスコアで評価しました。
そして、平均でおよそ9年間、追跡調査をおこなって、膵癌の発症リスクとの関係を解析しました。
この期間中に全体で351人の人が膵臓がんと診断されていました。
糖質制限食と膵臓がんとの関係について調査したところ、もっとも厳しく糖質制限をしていたグループでは、もっとも糖質制限をしていなかったグループに比べて、およそ40%も膵臓がんのリスクが低かったという結果でした。
さらに、糖質制限であれば、他にどんなタイプのタンパク質(動物性や植物性)あるいは、脂質をとっても、膵臓がんのリスク低下には影響しないということでした。
というわけで、糖質制限食は、膵臓がんの予防に有効である可能性があるという結論です。
糖質制限食のリスクは?
膵臓がんは、最近の治療の進歩にもかかわらず、依然として治療がむずかしいがんですので、できるだけ予防したいがんです。
とくに、糖尿病の患者さんなど、膵臓がんのリスクが高い人にとっては、糖質制限食がひとつの予防策になる可能性があります。
また、これは、すべてのがんに当てはまるわけではないと思いますが、おそらく、膵臓がんだけでなく、肥満に関連したがんと言われる、大腸がん、子宮体がんなどでも、予防につながる可能性があります。
一方で、糖質制限には、リスクも報告されています。
たとえば、最近の日本人での研究結果では、動物性のタンパク質や脂質を多くとる糖質制限食では、全体の死亡率が高まるという研究結果もあります。
つまり、糖質を減らしても、肉ばかり食べていると、あまりよくないというわけです。なにごとも、ほどほどがいいということですね。
私は、がんの予防や、あるいは、がん患者さんで、治療が一段落して、食事療法を考えておられるかたには、ゆるい糖質制限をおすすめしています。
糖質制限食とは、「米、小麦粉、いも、砂糖などに多く含まれる糖質をなるべくとらないことで、血糖値を上げない(あるいは、血糖値の上昇をゆるやかにする)食事療法」です。
具体的には、ごはんやパン、めん類などの主食を減らし、たんぱく質や脂質を多く含むおかずをしっかりとる食事のことです。
ただ、いきなり極端に糖質を制限するのではなく、まずは、今までの1/3に減らす、そして、大丈夫なら半分に減らすといった、ゆっくりと、やっていけばいいと思います。
たとえば、3食ともご飯を食べている人は、1食分はご飯を抜いて、その分、豆腐などのおかずを食べるといった具合です。
糖質制限に関しては、第一人者である高雄病院の江部先生が有名です。
糖質制限の本も出版されていますので、興味があるかたは、読んでいただければいいと思います。
まとめ
まとめですが、今回のアメリカ人を対象とした大規模な前向き研究からは、糖質制限によって、膵臓がんの発症リスクが低下するという結果でした。
がんと糖質制限食との関係については、まだ研究データが少ないので、はっきりとしたことは言えません。
今後も、新しい報告がでたら、また皆さんに紹介したいと思います。
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